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闇従(あんじゅ)さんの日記

(Web全体に公開)

2020年
08月20日
19:40

【視聴】悠久のアンダルス(1-10話全部)

 少し前に放送した10話モノの青春アドベンチャー。
 先だって広告を書いた通り、私のお気に入り作家さんである並木陽さんによる新作。脚本も含めれば春の『ハプスブルクの宝剣』、オリジナルなら去年の『紺碧のアルカディア』以来です。
 今回はイスラム小国家乱立期のイベリア半島東部が舞台。正確な時代はあてないようにしているようで、結構ぼかしていました(並木陽さん、あとでオーディオドラマのスタッフブログに「あとがき」を寄せていてそんな感じのことが述べてありました)。

 今回は要約して物語を追ってみましょう。まず主要人物紹介。

 登場人物1.ラシーダ
 ムルシア国の摂政として内政に辣腕を振るう。弟アルディーブとともにムスリムもキリスト教徒も共に手を取り合えるような理想の国づくりのため奔走する。幼少のころ近隣のキリスト教領主の地へ政略的に嫁いでいたが、父王が侵攻しその地は陥落。同じく幼かった夫リカルドはラシーダを逃がしたのち、燃え盛る城へと戻っていったという。今もリカルドのことは忘れていない。

 登場人物2.アル・ディーブ
 ムルシア国王。「黒き狼」と異名をとり武に長ける。才気にあふれ、人も良い。臣下にはもちろん国民にも慕われる完璧超人。政変により追われムルシアに身を寄せている近隣バレンシアの前領主の娘カトルンナダーと大変仲が良い。

 登場人物3.隻腕のダリオ
 勇猛な傭兵隊を率いる隻腕の勇士。十字軍にも従事しその過酷な戦いを生き抜いた経験を持つ戦上手。部下に慕われている。ムルシア国に対して強い敵愾心を持っておりそこを買われてバルセロナ伯に身を寄せ、戦地に赴くこととなる。

 登場人物3.ヒシャーム
 友人とともにウマイヤ王家の生き残りを騙った詐欺で金品を巻き上げていた。ぱっと見では姉ラシーダでも見分けがつかなったほどに容姿がアルディーブに似ている。度胸はあり、やればできる子。

 登場人物4.カトルンナダー
 おじによって引き起こされた政変によってバレンシアを追われた前領主の娘。今は友好的だったムルシアに身を寄せ、ラシーダを姉と慕い敬愛する。アル・ディーブとはどうも相思相愛だった模様。それがゆえにヒシャームとはぶつかりがち。気丈な器量よし。

 登場人物5.バルセロナ伯ラモン
 ムルシア国とは何度も剣を交えている強国バルセロナの現領主。人を見る目があり、度量も大きい。ムルシアに敵意を抱いている隻腕のダリオを迎え入れ、攻略を目指す。なかなか食えないおじさんだが優秀。

 ここからは本編。
 例によって良い人は早死にします。アル・ディーブは隻腕のダリオを擁したバルセロナとの戦いによって急死(このことはごく一部の人間のみが知る。死去までが1話)。
 国内の動揺を引き起こさないため、ラシーダはヒシャームを見つけ出して代役へと仕立てます(ここのひと悶着もなかなか楽しかった。この詐欺師をひっ捕まえてくるところまでが2話)。

 もちろん全くの部外者だったわけで、王らしく振舞うためのあれこれ、立ち振る舞いから教養などをラシーダや、その妹ニスリーンたちから色々仕込まれます。鞭をビシバシ振るわれながら(ほんとに)。カトルンナダーに会えば「あなたなんかアルディーブ様じゃない!」とか言われる中、ヒシャームは反発もしながらムルシアでの生活を続け、ラシーダの思いも知り王としてやっていく決意も固めていくわけですが・・(3~5話)

 ついにバルセロナがムルシアへ侵攻。迎え撃つヒシャームも奮戦しますが、やはりここは経験の差。一気に肉薄されあわやの事態に。ともに従軍していたラシーダが身代わりのことを吐露(「その人はアルディーブじゃない。別人よ!」)し命は助かることに(6話)。

 ダリオは身代わりのことをバルセロナ伯に報告。「罠かもしれないが、面白いことを言う。一度会ってみたい」とほのめかします。そんな折、ムルシアに身を寄せているカトルンナダーのもとに手紙が。それは私欲の限りを尽くすばかりの現領主を追放しようとする、バレンシアの民からのものでした(7話)。

 バレンシアへと赴くカトルンナダー。しかしすでにおじの姿はありませんでした。身の安全と引き換えに南の大国ムワッヒドへ町を売り渡す所業に出ていたのです。占拠のため5万の大軍が迫ります。カトルンナダーはムルシアへ助力を要請。急報を受けたラシーダは一計を案じて、ラモンとの会見にヒシャームとともに臨むのでした(7-8話)。

 バレンシアは交易の要。ムワッヒドにみすみす取られてはともに具合が悪い・・ラシーダはラモンにジェノヴァも巻き込んだバレンシア防衛を提案。話を取りまとめることに成功します。。包囲を狭めつつあるムワッヒド軍に対し、まずバルセロナが風穴を開けそこをついてムルシア軍が入城、バレンシアに物資を届け、ジェノヴァは河を上り投石機を使った支援で敵の戦意をくじく・・。時間はない。すぐに決行に移される。奮戦するバルセロナ、ムルシア両軍でしたがなかなかジェノヴァが到着しません(8-9話)

 先だって降った大雨が川の流れを変えてしまっていました。カトルンナダーの機転でのろしを上げて位置を知らせるバレンシア。気づいたジェノヴァ船団が到着し、ムワッヒド軍に投石を開始。形勢は優位に。
 3倍近い兵力差での激戦を戦い続けるダリオですが、さすがに疲労の色を隠せません。ヒシャームもまたムルシア・バレンシアの兵とともに戦い続けていました。一気にけりをつけるため、ダリオは敵将を仕留めることを決意し最後の猛攻をしかけみごとやり遂げます。散発的な戦闘の続く戦場で偶然出会うダリオとヒシャーム。ダリオはヒシャームに「俺が戻らなかったらこれをラシーダに渡せ。彼女が見ればわかる」と小袋を託します。
 城内に戻るヒシャーム。ダリオはまだ帰ってこない。ヒシャームはラシーダにダリオから預かった小袋を渡します。その中身は色ガラス片でした。それはかつての夫リカルドがラシーダからもらった本当に何気ない品物。全てを悟ったラシーダは城から飛び出し、ダリオを探し、ひどく傷つき朦朧とした彼を見つけるのでした(9話)。

 将を失い、統制が利かなくなったムワッヒド軍は撤退。バレンシア陥落は何とか免れました。あとは後日談。なおダリオは死んじゃいませんでした。物凄く死亡フラグっぽかったんですが。だって「夢か、夢なら言っても良いかもしれない。俺は今でも・・」みたいなこと言ってたので。ヒシャームとラシーダはそのままムルシアで頑張り、カトルンナダーもバレンシアの統治に関わったようです。バルセロナはのちのち、アラゴン連合王国となってこのアンダルスのレコンキスタを主導することなどが語られるのでした(10話)。

 史実よりも物語というか、人の機微を重視したそうです。傭兵団はキリスト教国にもイスラム教国にもついて戦っていたというのは史料がいっぱいある事実なので、あったかもしれない1ページという感じでしょうか。モチーフになった人物はいても、そのものじゃない。自分の理想をもって生き抜くのは格好良いですね。そんなお話でした。
 なんか長大な文章に・・

コメント

2020年
08月22日
12:52

最近ラジオドラマの時間帯が仕事で
聞けないです

どこかに落ちてないか探してみるかな

イスラムが舞台っていう作品はあまりないですね
興味あるんですが

2020年
08月23日
15:03

2: 恋刀

闇従師へ

こんにちは、失礼いたします。
お疲れ様で御座居ます。

僕ではどうあがいても届かないスケールの物語です<(_ _)>
悔しい以上に尊敬いたします

いつも 有り難う御座居ます
失礼いたしました。

2020年
08月23日
19:17

>>あおねこさん
聞き逃しサービスもあるのですが、
ラジオだとやっぱり「わざわざ聞く」となると相当意識しないと・という気はします。
青春アドベンチャーやFMシアターは、こっそりUPしてる人がいるはず・・です。多分。

イスラムはなかなか日本人的には遠い文化ですよね。
色々砂漠の知恵的なものもあって興味深いです(このお話的にはあまりかかわってこないですが・・)。

2020年
08月23日
19:19

>>恋刀さん
並木陽さんはそういうのが好きで、
また教科書の副読本なんかにコラム書くくらいの人ですから・・

人間、興味関心はそれぞれ違うわけですので恋刀さんは恋刀さんがこれぞと思うものを書いていけばよいのではないかと思います。