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咲村珠樹さんの日記

(Web全体に公開)

2013年
02月13日
22:44

グラマンX-29

往年の名作『エリア88』で主人公・風間真の愛機として最後に受領したのが、グラマンX-29前進翼試験機です。


ベースとなったのはノースロップF-5Aフリーダムファイター。
この中古機の基本フレームを基に、F-16の操舵装置と降着装置、F/A-18のGE製F404ターボファンエンジンで機体が構成され、一部炭素複合材を使用した主翼を前進配置(前進角33度)してカナード(先尾翼)を装備したものです。

F-5をベースにF404エンジンを単発配置……ということで、真の以前の愛機、ノースロップF-20タイガーシャークと共通のように思えますが、実験機ゆえに予算低減の為の寄せ集めパーツで構成されていたのでした。
ごらんの通り、メーカーもノースロップではなくグラマン。社内コードは「モデル712(G-712)」といいました。

X-29は2機(82-0003と82-0049)製造され、1984年12月14日に初飛行。
1944年8月8日に初飛行したドイツ空軍のユンカースJu287(戦後ソ連が接収)に続き、2機目のジェット前進翼機となりました。

初飛行後、NASAの前進翼飛行特性試験に用いられ、1991年までに242回の飛行を実施。
この間の1985年12月13日には、前進翼機として初めて、水平飛行で音速を突破しています。
前進翼は後退翼同様高速での有利さがあり、更に翼端失速が起こりにくい特性がありますが、翼の剛性と飛行安定性に課題がありました。
翼の剛性は炭素複合材で克服し、飛行安定性が悪い点は現代のコンピュータ制御の操舵システムであるフライバイワイヤの採用により動的安定を得、逆に「機動性の高さ」に転化することができました。

そして前進翼は(スキージャンプの「V字ジャンプ」を想像してもらえると何となく判るかと思いますが)高迎角時の失速特性に優れていました。
実験では最大67度まで失速せず、45度までなら良好な操縦特性を得ることができました。


現在1号機は、オハイオ州デイトン(ライト兄弟の出身地)ライトパターソン基地に隣接するアメリカ空軍博物館に、2号機はカリフォルニア州にあるエドワーズ空軍基地敷地内のNASAドライデン・フライトリサーチセンターに展示されています。

ベースとなったF-5の製造メーカー、ノースロップと、X-29を作ったグラマンが、今は合併して「ノースロップ・グラマン」になってるのは、この頃から縁があった……ってことだったりして。

前進翼の実験機は他に、1997年にはロシアでSu47ベールクトが作られ、2000年まで試験飛行が行われました。
こちらは推力偏向ノズルも装備して、更に機動性が高まっていました。
平べったい機体形状など、いくつかの技術は、現在開発中のPAK-FA(T-50)に活用されていると推測されています。


これら前進翼機は、機体の操縦性(機動性)は非常に良かったのですが、レーダー反射が大きくステルス化という点では不利な形状だった為に、結局実験機レベルで終わってしまいました。
ステルスの時代がもう少し遅かったら、ひょっとしたら前進翼の戦闘機が実用化されていたかもしれませんね。