戦艦同士の砲撃戦で艦隊の雌雄を決する……という海戦は、第二次大戦で過去のものとなりました。
(太平洋戦争降伏文書調印の舞台ともなった、戦艦ミズーリの16インチ砲射撃)
現代の艦船は、主に砲の射程距離よりも遠く(アウトレンジ)からやってくる、対艦ミサイルや航空機による攻撃を想定しています。
なので、大きな砲を積む為に船体を大きくせざるを得ない戦艦は、的が大きくなる為に消え、多くの航空機を運用する為に大きくならざるを得ない空母や強襲揚陸艦を除けば、巡洋艦や駆逐艦クラスの戦闘艦が艦隊の主役となったのです。
それでも、戦闘艦には「主砲」が存在します。これはミサイルが攻撃しづらい近距離目標に対する攻撃手段として、今も残されているのです。
ただし、水上目標(艦船)では、基本的にそこまで接近することはレアです。
どちらかと言えば、飛来するミサイルや航空機を迎撃する「対空兵装」としての色合いが強くなっているのが、現代の艦砲です。
動きの速い目標を相手にする関係で、現代の艦砲は「速射砲」と呼ばれる、連射の利く砲が装備されています。
たとえば、一昔前の護衛艦が装備しているのと同型のオート・メラーラ(イタリアの会社)76mm砲は、こんな感じ。
最大で120発/分の発射速度を誇ります。もはや「機関砲」と言っても差し支えないですね(^^;
第二次大戦中のM4シャーマン(アメリカ)やパンター(ドイツ)、T34/76(ソ連)などの戦車は、このサイズの砲を装備していましたから、もし戦車がこんな速度で撃ってきたら……(給弾装置が大規模なので戦車には載りません)。
そして、新鋭の護衛艦などで採用されている127mm(5インチ)砲はこんな感じ。
(米海軍タイコンデロガ級イージス巡洋艦の5インチ砲)
どちらの速射砲も、撃つたびに、まるで自動販売機から缶が出てくるように、薬莢が排出されていきます。
これ、海上自衛隊では発射前、舷側にネットを張っておき、排出された薬莢を全部回収することになっています。機関銃や小銃で薬莢を回収し、後で数をつきあわせるのと一緒ですね。それでも一部は、甲板でバウンドしてネットを越え、海に落ちちゃうそうですが(ちゃんとそれはカウントするそうです)……。
排出された薬莢はとても熱く、作業時には革手袋をしているそうですが、それでも軽くやけどするとか。
ちなみに、よく射撃時に「ファイア!」と言ったりしますが、アメリカ海軍では射撃の際、そう言わずに「シュート!(SHOOT!!)」という言葉を使います。
アメリカ海軍で「ファイア!(FIRE!!)」という言葉は「船内火災発生!」という、緊急事態を告げる際に使われる言葉なのです。
コメント
09月02日
14:45
1: U96
海上自衛隊では、空薬莢をつぶして再利用できないようにしてから金属回収業者に売っているそうですね。収入は士官のパーティー代になるとか聞きました。
09月02日
17:43
2: 咲村珠樹
>U96さん
空薬莢は大体そうするようですね。さすがに戦闘機のバルカン砲などは回収できませんが……(^^;
時々用途廃止になった装備品が民間に払い下げられますが、あの手続きが気になります。定期的でなくイレギュラーなものですから。