大きいといえども、滑走路より遥かに短い空母へ着艦する際は、着艦フックをアレスティングワイヤというものに引っ掛けて停止します。
着艦時は時速150マイル(240キロくらい)出ている艦載機ですが、これを飛行甲板のおよそ3分の1、320フィート(約96メートル)で停止させるのがアレスティングワイヤ。
6メートルの間隔で4本設置されており、引っ掛けやすいように飛行甲板から2インチ(約5センチ)ほど浮いて設置されています。4本のうち、3本目で停止するのがベストなんだとか。
もちろん、引っ掛けそこなうこともあります。その時はすぐ飛び上がり、やり直せるように、飛行甲板に着地した瞬間、パイロットはしくじった時飛び上がれるようにエンジン出力をミリタリー(最大推力)にします。
引っかかると急激に減速するので、その感覚があると一気にエンジンをアイドリング出力に落とすのです。
結構失敗するんですよ。
でも、この着艦は飛行隊のLSO(Landing Signal Offcer=着艦信号士官)により査定されてまして、成績が悪いと怒濤の訓練が待っています。
また、この空母への着艦には資格が必要で、しかも有効期限は最後の着艦から60日。だから空母が帰港して次の航海に出るまでの期間、航空部隊は着艦訓練を行わなければなりません。……これが厚木基地で騒音問題を引き起こした「離着陸訓練」です。現在は硫黄島で行っています。
ちなみに、この空母への着艦。いままで着艦した最大の航空機は、中型輸送機のC-130(全長約30メートル・全幅約40メートル)です。……もちろん、あくまで実験です。
ベトナム戦争中の1963年10月から11月にかけて、空母フォレスタル(以前横須賀に配備されていたインディペンデンスの同型艦)で行われました。
驚くことに、この実験で使われたC-130は全くのノーマル状態。つまり着艦フックもカタパルト用の装備も装着せず、滑走路で離着陸するように着艦(実は発艦も)してのけたのです。
でも、さすがに無茶だったらしく、実戦では使用されていません……そもそも格納庫に入らないし(^^;
コメント
07月31日
22:35
1: U96
…海に落ちそうで危なっかしく思いました。
07月31日
22:38
2: 退会済ユーザー
そういや、武論尊センセの某マンガで
NASAのスペースシャトルが空母に着艦・・・
と云うより胴体着陸するシーンあったなあ~~
08月01日
04:37
3: 鉄砲蔵
ケーブルテレビのドキュメンタリーでこのアレスティングワイヤーのことは言っていましたが、飛行機って真下が見えないから難しそうだなってその時から思っていました。
やはりミスしますよね~。
空母から双発機の発着といえば第二次世界大戦初期のドゥーリットル爆撃隊がありますが、あれは発艦だけ空母ホーネットからで、中華民国の空港に着陸することになっていたんですよね。
C-130の場合は期待に何かダメージがあり、空港まで持たないとか、緊急事態を想定しての実験でしょうね。
おっしゃるとおり、あくまで実験で、よほどのことが無い限り実行しないでしょうね。
08月01日
12:26
4: しえら
数年前、基地の警備に就いていたときですが、モニター監視をしていたとき、バリヤーを使って着陸する訓練をしていた機体が、ワイヤーを引っ掛けた瞬間にバリヤーごと弾け跳んだのをモニターごしに目撃しました。
見事にバラバラになったのを今でも覚えています。
08月01日
21:08
5: 咲村珠樹
>U96さん
まぁ、落ちないように調整をしていたんでしょうが(最初の着艦が調整用のタッチ&ゴーの様子だと思います)、コワイですよね。
でも、着艦フックを使わなくても、それと同じくらいの距離で停止するなんて……C-130、恐ろしい子……。
08月01日
21:11
6: 咲村珠樹
>倶利伽羅いちろうさん
地球に降りてくる時のスペースシャトル・オービタは、燃料なしのスッカラカンなので、胴体着陸(着艦)しても火災の心配はないんですが、やり直し利かないんで無理ですよね(^^;
08月01日
21:17
7: 咲村珠樹
>鉄砲蔵さん
旧海軍のパイロットが着陸時に使っていた、尾輪と主車輪を同時に接地させる「三点着陸」というのは、この着艦時に使うテクニック(こうしないとワイヤを引っ掛けられない)なんですよね。
ドゥーリットル隊のB-25ですが、発艦しても空母に戻らない……というのは、大きすぎて着艦しても格納庫に入れられないので飛行甲板を塞いでしまい、2番手以降が着艦できないから、というのもありまして。
C-130でも、やはり格納庫に入らないので飛行甲板に置きっぱなしになり、他の航空機が運用できない為、作戦としては現実的でなかったのでしょう。
08月01日
21:20
8: 咲村珠樹
>しえらさん
陸上機でバリアを使う際は、本当に緊急時になるので、着陸時の速度をちゃんと調整しないと、目撃されたようにバラバラになりますよね……。
この件は7空団でのお話なんでしょうか? だとしたら損害金額が……(-_-;