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U96さんの日記

(Web全体に公開)

2019年
10月05日
11:02

魔窟アーカイブ:南北戦争の潜水艦

・・すみません。昼から出かけます・・

 今も昔も潜水艦は敵制海権下に侵入して、破壊活動をし、その海域を危険海域にしてしまう弱者の兵器です。
 アメリカ南北戦争は潜水艦(艇)が戦った初めての戦争でした。北軍の海上封鎖がかなり応えてきた頃、南軍は聖書の巨人ゴリアテを倒したダビデにあやかって、ダビッド(David)艇と呼ばれる潜水艇を何隻も建造して北軍艦隊に攻撃をかけました。1864年2月17日、ハンレー号と名付けられたダビッド艇が北軍の新式の蒸気艦ハウストニック(Housatonic)を撃沈しました。これは世界で初めて軍艦を沈めた潜水艦(艇)として戦史に記憶されました。

 この潜水艦は鉄製で長さ60フィート。楕円形の横断面を有し、船体は二重になっていて、間にバラストタンクがあります。
 推進機関は人力で、8人の乗員(1名が操縦を担当する)が回すクランク軸に取り付き、むらのない一定の力でスクリューを回すことができました。潜航時間は30分くらいでした。
 潜航の仕方は、円筒形船体の外側のバラストタンクに海水を入れ、船体を水面すれすれまで沈め、8人の力でスクリューを回して前進します。艦長は前部にいて、縦舵で方向を決め、潜舵を下げ舵に操作します。前進につれ、海水は潜舵の上面に当たるので、潜舵に下向きの力が働き、艦を下に押し下げると同時に艦首を下げ、艦は前進しながら潜航します。浮き上がるには潜舵を上向きに変えます。

 この艦はハンレーという人が、アラバマ州モービルで製作し、サウスカロライナの港チャールストンまで鉄道で運ばれてきました。
 はじめは機雷を曳航して敵艦に当てるつもりでしたが、後にスパー・トーピードに改められました。これは艦首から長い丸太棒を突出し、その先端に爆薬を装置し、敵艦の舷側にぶつけて爆発させるもので、爆発がこちらに危険をおよぼす恐れがありました。
 潜航時間が短いので、多くの場合、上部を僅かに水面上に露出し、その部分にある2個の昇降口蓋を開けて、いわゆる侵洗状態(Awash position)で航行しました。航行中、近くを汽船が通ったら、その波で沈没し、艦長の他は皆、死んでしまいました。そんな艦なので、実戦に出るまで35人も犠牲者を出していました。1863年10月にはハンレーも死んだのです。

 1864年2月17日夜、ハンレー号は出撃しました。攻撃の際は潜航で行くべきでしたが、不幸つづきを知っている乗組員は、どうしても潜るのはいやだと言って、昇降口を開いたまま、水面航走で進みました。敵兵が気付いた時、ハンレー号はもう敵の舷側に接近していて、砲を一杯下に向けても、弾はずっと先の海面に飛ぶ始末でした。艦長は竿の先の火薬が丁度よい処に来るように艦をもって来て爆発させたから、敵艦は艦尾を先に左舷に転覆して沈没しました。そのあおりでハンレー号も例の通り昇降口から水が入って、爆発のために敵艦の舷側に出来た大孔に頭を突っ込んで沈んでしまい、乗員9人全員が艦と運命を共にしました。
 北軍はハンレー号に逃げられたと思っていました。しかし後年、潜水作業中にハウストニックの横に沈んでいるのが発見されました。

コメント

2019年
10月05日
15:03

初期の潜水艦って小舟に爆弾つけた方がましなくらいの代物だったんですね。なにしろ、危険すぎて潜れないのですから。

2019年
10月05日
21:25

2: U96

>鉄砲蔵さん
はい。ハンレー号は人力推進でしたが、このダビッド艇と呼ばれる南軍の小型潜水艇には蒸気推進のものもありました。