実際、この国では海軍という組織は陸軍内の小規模な一部門にすぎなかったので、政治的な対立に巻き込まれたり、親組織の陸軍のように、つまらぬ伝統に固執する必要もなかったのです。そのため海軍は、オーストリア・ハンガリー軍の中で最も革新的であり、行動的な軍隊となったのです。例えば1914年の時点で、オーストリア・ハンガリー軍は、当時、実戦に投入され始めたばかりの航空機、潜水艦をはじめとする新兵器に対し、どこの国の海軍よりも深い関心を抱いていました。不幸にも財政は逼迫しており、また国内の軋轢もあったため、そうした新しいシステムを導入することはできなかった。そのため海軍は潜水艦開発のために大きな予算をつけることができず、他国、とりわけドイツが潜水艦を完成すると、海軍関係者たちの耳目を集めました。
潜水艦部隊は、たちまち海軍におけるエリート部隊となりました(それに続いたのは、航空部隊のみである)。インフォーマルな雰囲気と高給とが、潜水艦部隊の人気につながりました。訓練は厳しく行われました。この新しい部隊をテストし、艦隊に円滑に組み込むため、あらゆる努力が払われました。
1913年、ハウス提督は巡洋艦に対し模擬攻撃を行なう潜水艦に乗り組みました。しかしその時の演習は、開戦時における潜水艦部隊の発展や配備に、肯定的なインパクトを与えるものではありませんでした。即ち、ハウスは潜水艦を防御的な兵器であると見なし、港湾守備隊として運用することに決め、活動海域を海軍の主要基地のあるプーラ周辺のみに制限しました。そのため潜水艦部隊は、主にアドリア海南部で活動する連合軍艦船を攻撃することは疎か、捕捉することさえ事実上、不可能でした。さらにハウスは、潜水艦の1隻からもたらされた発見報告を読み、艦長のフォン・トラップ中尉を、敵部隊を撃破できなかったことについて痛罵しました。「まったく、この間抜けを艦長に据えたのは、どこのどいつだ」
(つづく)
コメント
04月10日
22:44
1: RSC
ハウス提督が有能なのか少し微妙に思えてきました
04月10日
22:59
2: k-papa
ハウスさんはバイコディン依存症ですかしら。
だとしたら、とても有能。
04月11日
05:10
3: U96
>RSCさん
冗談ですが、ハウス食品はスポンサーになって「トラップ一家物語」が世界名作劇場でアニメ化されるのです。
まあ第一次大戦初期ですから、ドイツのU-9が3隻の装甲巡洋艦を1時間の間に沈めるまで、潜水艦の能力は未知数だったのです。
04月11日
05:12
4: U96
>k-papaさん
ハウス提督はいつも頭が痛い思いをしているのでしょうか?