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U96さんの日記

(Web全体に公開)

2020年
03月10日
18:47

日本陸軍 手榴弾

 日本の手榴弾の特徴は曳火時間が少し長いことでした。日露戦争以来の手投げ専用マーチン・ホール式着発榴弾の後継として開発された十年式曳火手榴弾はそれまでの着発式に代えて曳火式信管を採用しました。擲弾筒弾薬を兼ねるため曳火時間は約7秒に設定されました。初速の遅い擲弾筒で45度の射角で発射すると、曳火5秒では空中で爆発してしまうからです。
 満州事変、特に上海の戦闘では十年式手榴弾の曳火時間が問題となりました。中国軍の曳火5秒に対して、日本軍の曳火7秒は長すぎたのです。部隊からは曳火時間を任意に設定できるよう要求が出されました。しかし技本では「敵前で各兵卒が使用する武器にそのような巧妙な仕組みは実行不可能である」と却下しています。
 歩兵学校ではその戦訓に基づき、昭和11年に研究成果を発表しています。「突撃に際しては、突撃距離が手榴弾投擲距離(約30メートル)以内の場合、突撃発起位置で発火、3~4秒後に投擲、爆発と共に突入せよ。敵前40メートル付近の場合、発火と共に発進し、約10メートル疾走して手榴弾を投擲、その場に伏せて爆発を見て突入せよ。それ以上の場合、発火準備をして発進し、40メートル付近で発火、30メートル付近で投擲、伏臥、爆発後に突入せよ」と兵士に戦場でこんな名人芸が要求されたのです。
 支那事変で再度敵の手榴弾に苦戦を強いられると、さすがに大量に動員された新兵に「発火させたまま握って10メートル突っ走れ」とは言えず、九七式、試製九八式と手投げ専用の手榴弾が開発されます。次の九九式では小銃擲弾器兼用の甲と手投げ専用の乙が作られました。外見上の大きな変化は、弾体のギザギザ(滑り止め)がないことです。九九式は小型・軽量でしかも直径が5ミリ小さかったのです。九九式は軽い上に手の中で実に落ち着きがよく、取り落とす心配が少ないものでした。生産簡略化も兼ねて、滑り止めは廃止されました。曳火時間は甲で4~5秒、乙で4秒となりました。結果、歩兵は発火済み手榴弾を握って走る必要はなくなりました。
 …余談ですが、敵に手榴弾を投げつけられたら、拾って投げ返すのが有効な戦法だそうです。

コメント

2020年
03月10日
19:08

1: RSC

ナチスドイツは投げ返しの対策として、ピンを抜いて数秒待ってから投げつけたそうです。

2020年
03月10日
19:44

3: U96

>RSCさん
なるほど!現代でも通用する戦法ですね。

2020年
03月10日
19:46

4: U96

>わずさ@修行中さん
ありがとうございます。
誤って落とすことが無いようにしたいものです。