・・すみません。出かけます。
ある地点からある地点までの移動において大事なことがいくつかあります。
ひとつは「水平儀(ジャイロコンパス)の調整」です。
飛行機では方向を表示するのに、磁気コンパスでなく、ジャイロコンパスを主に使用します。なぜなら、磁気コンパスは反応が遅く、旋回してすぐは正確な方向を示さないからです。また、ジャイロコンパスは前後左右の傾きも表すことができます。
ジャイロコンパスは計器板の中央にある丸い玉です。上半分が空を表す青、下半分が地面を表す黒に塗られ、境目のところに今自分がどちらを向いているかを示す「SNWE」の方角と目盛りが刻んであります。一回スイッチを入れると(エンジンが回ると)自動的に作動します。
ジャイロコンパスは飛び上がる直前に磁気コンパスと同調させます(パイロットが調整できるようになっています)。水平儀は一回動き始めるといつまでも同じ方向を向くようにできています。しかしながら、避けようのない欠点があります。それは「地球の自転に同調していない」ということです。地球は24時間かけて1周しているので、もし、12時間放っておいたら北を指していた物が南になります。
そこでだいたい15分おきにジャイロコンパスと、磁気コンパスの同期を取らなくてはなりません。零戦ではジャイロコンパスの横に丸い磁気コンパスが付いています。ジャイロコンパスを調整して磁気コンパスに合わせます。これをしないと空の上で迷子になります。
ただし、ぴったり合わせればいいかというと、そうでもありません。飛行機は一部に鉄の部品を使っています。これらが影響を与えるので、磁気コンパスの方向指示は正確ではありません。
ですから、飛行機が工場で組み上がった時点で、磁気コンパスがどれぐらいずれるのかを記録しておけば、機上でパイロットが修正できます。どれぐらいの誤差が出ているかはジャイロコンパスのそばに書いてありますから、これを読んで調整するわけです。鉄製品の持込は注意してください。軍刀を持ち込んで計器に誤差を生じさせ、二度と帰ってこなかったパイロットも珍しくないのです。
零戦にはGPSはありません。そこで、地面の上を飛ぶ場合は基本的に地上目標を見て、飛ぶ「地文航法」を利用しました。今日でいう有視界飛行です。飛行前に目的地を設定し、航空図(海軍ではチャートと呼びました)に目標物をマークしておきます。実際に飛んでみてある目標物に達するまで、右にぶれたら次の目標物の間にずれた角度を倍にして元の航路に戻します(これを「倍角修正法」といいます)。あるいは速度から計算して早く着きすぎた、あるいはちょっとゆっくりだったというのも記録していきます。この「記録」は非常に重要になります。というのも飛行機というものは常に風に流されます。あまり流されると自分の位置がわからなくなり、行きたいところへも行けません。
チャートそのものは非常に正確でした。日中戦争では、陸軍の九七式司令部偵察機が綿密な偵察飛行と写真撮影から進撃ルートを設定しました。この写真をベースにチャートが作られました。
では「A基地」から「B基地」900キロメートルを飛んでみましょう。飛行前に道中の天候や風向きを調べます。そして最も重要な目的地までの方位と距離を「チャート」に記入しておきましょう。あとは速度を一定(巡航速度の200節(ノット))にして先ほど調べた方位を飛び続けます。速度を一定にするのは飛行速度で距離を算出するためです。基地を離陸して2時間25分後に「B基地」が視界に入るはずです。「零戦」に搭乗する時は正確な時計は必需品です。
コメント
11月02日
18:26
1: 鉄砲蔵
日本軍の記事見てて思います。
もし日本軍が勝っていたら有色人種の差別はなくなっていたのだろうか?と。
日本人は多神教の宗教観を持つ民族ですから奴隷を使った経験がなく、大東亜共栄圏構想もどうやら本気だったようですし。
11月02日
19:28
2: U96
>鉄砲蔵さん
有色人種の差別がなくなっていたかは、わかりません。
ついでながら、南方の資源と石油のほしい大東亜共栄圏よりも、満州の五族協和の方に興味が行ってしまっております。なにせ、日本軍ロシア人部隊まで作られたのですから。