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U96さんの日記

(Web全体に公開)

タグ : 潜水艦

2019年
05月28日
18:00

オーストリア・ハンガリー軍の潜水艦部隊(最終回)

 1918年6月、部隊保有の潜水艦数は21隻を数え、それまでで最大規模となりました。その時点で10隻のUBⅡ級が配備されており、1隻が黒海にありました。航続距離の長い潜水艦を装備したことで、オーストリア・ハンガリー軍の潜水艦部隊は地中海と、クレタ島とマルタ島の間のイオニア海まで活動範囲に収めたのです。
 しかし同時に連合軍は一つの指揮系統の下、組織だった対潜攻撃を開始し、護送船団を編成するようになっていました。さらに日本、アメリカ、ブラジルから、重要な援軍が到着していました。また帝国の造船能力の低下、外洋航海に伴う修理と維持に必要な資材の不足により、哨戒活動が制限されるようになっていました。ドイツ系作業員のストライキが不安をかき立て、造船所の作業効率を低下させました。そうした結果、オーストリア・ハンガリー軍の潜水艦部隊は、ドイツ軍の潜水艦部隊ほどには活躍できませんでした。
 仮にあと2年早く、オーストリア・ハンガリー軍が航続距離の長い潜水艦を手に入れていればどうなっただろうか?U-14によるトラップ艦長の作戦は、はるかに大きな成功を導くだろうことを暗示しています。イタリアを戦争から脱落させるといった、戦略的な大成功を収めることは無理としても、オーストリア・ハンガリー二重帝国が、戦略的により有利な立場に立つことに、少なからず貢献したのではないでしょうか。
 合計で21隻を超えることがなかった帝国の潜水艦が何をなし得たか、数字が全てを語ってくれませんが、連合軍がアドリア海で制海権を得ることを阻止したのは間違いなかったのです。潜水艦部隊は、オーストリア・ハンガリー軍で最もコストパフォーマンスの良い兵器でした。多くの連合軍艦船を釘づけにしたばかりか、長く複雑な帝国の海岸線を敵の海軍から守ったのだから。その費用対効果は尊敬に値すると言って間違いではないでしょう。
(完)

コメント

2019年
05月29日
22:00

1: RSC

連載お疲れ様でした。次のシリーズを楽しみにしています。

2019年
05月30日
05:21

2: U96

>RSCさん
ありがとうございます。しばらく潜水艦の話に回帰するかもしれません。