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U96さんの日記

(Web全体に公開)

タグ : クリミア戦争

2018年
11月03日
13:06

クリミア戦争史(最終回)

 各国代表団は和平条約に公式に署名するための最終会合に集まりました。3月30日、日曜日の午後1時でした。日曜日だったにもかかわらず、この大ニュースを世界に知らせるための電報の発信作業が始まりました。パリ市民は歓呼して街頭に繰り出し、夜になると、花火がパリの空を焦がしました。ナポレオン三世がクリミア戦争に参戦した動機は、フランス国家の栄光を回復し、国民の喝采を浴びることでしたが、ついにその目的が達成されました。
 和平成立の知らせがクリミア半島に届いたのは、さらにその翌日の4月1日でした。アレクサンドル二世は自由主義的なフランスに対して根強い不信感を抱き、フランスの影響力拡大を防止する対抗勢力として保守的な同盟国プロイセンを重視し、プロイセンの首相オットー・フォン・ビスマルクを支援しました。アレクサンドル二世はビスマルクがプロイセン大使としてサンクトペテルブルクに駐在していた頃(1859~62年)からその手腕に注目していました。ビスマルクもロシアとの友好関係の維持を重視しました。その後、プロイセンは対デンマーク戦争(1864年)、普墺戦争(1866年)、普仏戦争(1870年)を戦うが、どの戦争でもロシアは一貫してプロイセンを支持することになります。普仏戦争でフランスが敗北し、ビスマルクの主導でドイツ帝国が成立すると、ロシアはドイツの支援を得て、1871年、ついにパリ和平条約第11条の廃棄を実現しました。黒海艦隊の復活が可能となったのです。パリ和平条約の締結からすでに15年の歳月を経ていました。この間に国際情勢はすっかり変わっていました。ナポレオン三世は普仏戦争後に成立した第三共和制によって帝位を追われ、英国に亡命していました。オーストリアとフランスは国際的な地位と影響力を失い、ドイツとイタリアの両国が新興の統一国家として成立しました。クリミア戦争の争点とそれをめぐる情念は急速に過去のものとなりつつありました。
 パリ和平条約によってロシアは領土の一部を失いました。しかし、それよりもむしろ重大だったのは国家の威信が失われたことでした。ベッサラビアを奪われ、黒海艦隊の活動を禁じられたこともさることながら、バルカン半島に対する支配権を失い、東方問題に関して18世紀以来努力して獲得してきた権益を喪失した痛手は大きかったのです。ロシアが戦前に欧州大陸で占めていた大国の地位を回復するのは、第二次大戦が終わる1945年以降になってからのことです。
(完)

 ・・・終わった。書いていて辛かったです。あまりにも不毛だったので。次は短期連載でまたアメリカ南北戦争を書きたいとおもいます。次回「帰ってきたストーンウォール・ジャクソン」にご期待下さい。

コメント

2018年
11月03日
15:00

1: RSC

連載お疲れさまでした。
この後ロシアは日本と激戦を繰り広げ、革命の嵐とドイツとの戦争に突入していくわけですね・・・。

2018年
11月03日
15:23

2: U96

>RSCさん
はい。つまらない話ですが、6日後にわずさ@修行中さんとロシア料理を食べに行く予定です。「ザ・フストリュチェ(私達の出会いに乾杯)!」

2018年
11月03日
15:44

おおっ!
思っていた10倍位細かく書いて頂いて心から感謝します! 凄く嬉しいです。

ロシアも回復する為に日本の方にまで進出してくるのですよね?

ドイツとイタリアも統一し、着々と世界大戦への準備が整ってきました。 不穏な時代の幕開けでございます。


 米南北戦争の続きも楽しみにしています。

本当に有難うございました!!

2018年
11月03日
16:04

4: U96

>ディジー@「本好きの下剋上」応援中さん
凄く嬉しいとは光栄です。途中で心が折れて連載をしばしば中断させてすみませんでした。やはり華のある戦いを書きたいです。そうでないとこうなります。次は第1次ブル・ランの戦いです。楽しみにお待ち下さい。私も楽しんで書きます。

2018年
11月03日
19:29

5: 恋刀

U96師へ

こんばんは、失礼致します。

まずは、クリミア戦争史のご執筆、
お疲れ様で御座居ました!

僕は、ここ数日OSの再インストールを致しまして、
なかなか魔窟へ伺えませんでした。

ところで、U96師の文章は、段落がつけられているものとつけられていないものが御座居ますが、何か理由が御座居ますのでしょうか?

もしも宜しければ、お教え願いたく存じます。

いつも 有り難う御座居ます
失礼致しました。

2018年
11月03日
21:26

6: U96

>恋刀さん
ありがとうございます。

段落の事は今まで段落をつけていなかったのpですが、読みにくいという指摘をもらい、段落をつけるようにしたのですが、疲れてくるとまた元に戻ってしまうのです。失礼しました。

2018年
11月03日
23:16

長期連載お疲れさまでした。

オスマン帝国、第2フランス帝政、ロシア帝国、ハプスブルク同君連合‥この後どこもいいとこがない。

絶対主義的な国家体制の終焉を見るようです。
どこも立憲君主制を目指す動き(‥ああ、ロシアは別ですかね‥)はありましたけど、途中で憲法停止したりとかそんなのばっかりですしね。

2018年
11月04日
09:34

8: U96

>闇従(あんじゅ)さん
ありがとうございました。

私は書いていてとても苦しかったです。
だって、カタルシスが無いのです。
これからは好きな将軍の話とか軽い読み物でリハビリしたいと思います。