主要テーマであるドナウ両公国の問題(第一項目)については、活発な議論の応酬がありました。英国は両公国をオスマン帝国の支配下に戻す案を支持しました。フランスは両公国を統合して独立国を設立しようとするルーマニア人のリベラル派と民族派を支援する姿勢でした。オーストリアはその帝国の南東部国境地帯に国民国家が生まれることに断固として反対でした。ハプスブルク帝国内のスラヴ系少数派の民族主義的運動を刺激する恐れがあったからでした。オーストリアは、ルーマニア人民族派へのフランスの支援がイタリア北部地域にオーストリアが持つ権益を放棄させるための圧力であることをほぼ正確に理解していました。ドナウ両公国に対するロシアの支配に終止符を打ち、ドナウ川の自由航行を保証する問題(第二項目)については、英仏墺三ヵ国の意見は一致していたが、ロシアによる支配が終了した後の方針については、オスマン帝国の名目的な主権の下に三ヵ国が集団的な保証を与え、将来の一定の時点でモルダヴィアとワラキアの住民による意思決定のための選挙を実施するという漠然とした計画以外には結論が出ませんでした。
(つづく)
コメント
10月27日
19:53
1: ディジー@「本好きの下剋上」応援中
イギリスはトルコ寄りの姿勢を示した結果の第一次大戦だとすると悲しいです。
トルコ・オーストリア両国、戦勝国すべてに世界的な視野を持ってほしかったですね。民族自決の波に乗ってほしかったです。
10月27日
20:26
2: 闇従(あんじゅ)
ドナウ両公国を領土化するフランツヨーゼフの野望は潰えた上に、多額の戦費。
友好国であったロシアと敵対し、英仏との関係は好転しない。
クリミア戦争、オーストリアはいいとこなしです。
フランスの動きは明らかに、続くイタリア統一戦争につながってますね‥
10月27日
20:52
3: U96
>ディジー@「本好きの下剋上」応援中さん
皆、自国の影響化の範囲での民族自決を望んでいたのですよね。
10月27日
20:58
4: U96
>闇従(あんじゅ)さん
パリ会議で英国とオーストリアは利害が一致するところでは、手を握りました。
フランスはイタリア統一を支援してちゃっかり領土を分けてもらう算段でした。
10月28日
01:27
5: 葛湯
オーストリアはチェコスロヴァキアやハンガリーの独立まで転落が続く悲しい時代ですね。
10月28日
06:36
6: U96
>葛湯さん
二重帝国というのが無理があったのですね。