1月15日、アレクサンドル二世は冬宮で二度目の顧問会議を開催しました。今回、議論を主導したのはネッセリローデ外相でした。ネッセリローデは皇帝に警告しました。今年、英仏連合軍はオーストリア国境に近いドナウ川流域地域とベッサラビアで攻勢に出ようとしている。したがって、ロシアはオーストリアとの武力衝突に巻き込まれる可能性が高い。オーストリアが英仏連合側に味方して参戦すれば、スウェーデン、プロイセンなどの中立国にも決定的な影響が及ぶであろう。ロシアが現在の和平提案を受諾しなければ、全ヨーロッパを敵にまわして戦う危険に直面するであろう。カフカス総督を務めたことのある老ミハイル・ヴォロンツォフ公がネッセリローデの意見を擁護しました。ヴォロンツォフは皇帝に訴えました。いかなる苦痛を忍んでも、オーストリアの和平提案を受諾しなければならない。戦争を継続しても勝利する見込みはなく、抵抗を続ければ現在の和平提案よりもさらに屈辱的な和平を迫られるであろう。クリミアとカフカスだけでなく、フィンランドとポーランドさえ失うことになりかねない。キセリョーフがこれに賛成してつけ加えました。もし、戦争を継続した場合には、オーストリア軍がウクライナ国境に近づくであろう。そうなれば、国境に近いヴォルィニ地方やポドリア地方の諸民族が、フィンランド人やポーランド人と呼応して蜂起する可能性がある。この危機に比べれば、オーストリアの最終提案が要求する犠牲など物の数ではない。高官たちが次々に立って皇帝に講和受諾を進言しました。ただひとり、皇帝の弟コンスタンチン大公だけが戦争継続を主張しましたが、大公はこの時何の役職にも就いていませんでした。1812年のナポレオンへの抵抗の精神を甦らせようとするコンスタンチン大公がいかに愛国心に訴えても、その主張には合理的な説得力がなかったのです。ついに、皇帝アレクサンドル二世は決断を下しました。翌日、ネッセリローデはオーストリア政府に対してロシアが和平条件を受諾する旨の通告を行ないました。
(つづく)
コメント
10月13日
17:31
1: ディジー@「本好きの下剋上」応援中
ようやく終わりそうですね。
多民族国家は民族紛争も怖いです。
周りの国が全部敵になって、内部まで紛争したら国自体が壊れかねないので 良識ある政治家なら停戦を主張するでしょう。 大公は中世気分が抜けていなかったのか? それとも皇帝のガス抜き感覚だったのかな?
10月13日
18:40
2: RSC
アレクサンデル二世としては一応、戦争継続派の意見も聞いておきたいところでしょうか・・・
10月13日
19:57
3: U96
>ディジー@「本好きの下剋上」応援中さん
はい。次回はパリ和平会議です。
ロシアはエリツィンの時代にはコサックの権利を認めると言って、コサックの子孫たちをぬかよろこびさせました。寄り合い所帯は難しいです。
10月13日
20:00
4: U96
>RSCさん
実は私はこのコンスタンチン大公のことをよく知らないのです。しかし、ロシアにはもう厭戦気分がみなぎっていました。