何年か前の話ですが、ボードゲームの例会に行く前に神戸の同人誌即売会、「そうさく畑」に寄ってきました。この日は同人作家の市川晃さんが、横浜から来ていたので、あいさつに行きました。私が忍者ものの本を買うと、「忍者や忍術は現代までしっかり継承されているんですよ!」と言われました。あまりに荒唐無稽な話なので、詳細を聞くと「冷戦後、元KGBの諜報部員の手記が出版され、ソ連は本気で日本を占領する気でいた。しかしながら、日本の諜報部員が優秀だったことで、その企みはことごとく失敗したと書いています!道を歩いていると『やあ!KGBの○○さん!いいお天気ですね!どちらへお出かけですか?』と声をかけてくる。これでは自分が日本と内通していると仲間に疑われると思った、とあります!」と言われました。私が「日本は世界からスパイ天国と呼ばれていたと聞いております!」と言うと、「まったく逆です!詳しいことはお買いになった本に書きましたので読んで下さい!」と言われました。以下、市川さんの本から解説いたします。
忍者のなかでも勝ち組は記録が伝わらないのだそうです。有名な忍者集団は負け組みであり、負けたので、正体が明らかになったそうです。雑賀衆は羽柴秀吉の本願寺攻めで本願寺側に加勢して敗北(雑賀の孫市は秀吉に帰順)、解散。甲陽流は主君の武田家が滅亡し、四散。飛騨流は飛騨の一向一揆とともに鎮圧される…という次第。
有能なのは無名の忍者集団で、例を挙げれば薩摩藩の隠密集団がそれです。この隠密集団は名前さえも伝わっていないものの、江戸幕府の隠密が薩摩潜入を生きては帰れぬ薩摩飛脚と呼び、実際、間宮林蔵など数名の例外を除いてことごとく幕府の公儀隠密を闇に葬っています。だからそうした防諜組織が存在したらしいことは確かなのですが、その実体は今もって明らかにされておりません。
似たような例として、秋田の与次郎狐の話が伝わっています。秋田藩主になった佐竹の殿様が秋田城を作ったとき、その山に住んでいた与次郎狐に城内に住むことを許した。これを恩に感じた与次郎狐は、飛脚に化けて佐竹公のため、秋田と江戸の秋田藩邸を行き来するようになったという…と、ここまでは民話の世界なのですが、この与次郎次常が佐竹に潜入する公儀隠密を次々と暗殺するに至って、それ狐じゃなくて狐と呼ばれた佐竹の忍者だろうということになります。
その与次郎狐は正体がばれて猟師に撃ち殺されたことになっております。その場所は奥州の目付け役で徳川四天王の一つ、酒井家の支配地でした。当時のマタギ(猟師)は関所を通らずに諸国の山々を渡り歩く免許状を持っていました。この免許状を発行していたのが、徳川家菩提寺の日光東照宮でした。マタギ衆が幕府のご用を勤めていたのは公然の秘密でした。平和な世の中で、公儀隠密と外様大名の忍者の秘密の戦いが続いていたことがうかがえます。なお、狐と呼ばれた秋田藩の忍者集団は、狐という呼び名以外その実体は今もって伝わっておりません。
平和な世の影で戦いの道に走ることに比べれば、平和産業に転業できた者の方が幸せだったかもしれません。伊賀同心、甲賀同心が警察機構に再就職したことは有名です。他にもいろいろ転業先があったようで、例えば古着屋がそうです。忍者はいろいろな職業に化けなくてはならないので、現役時代からの副業に専念したほうがいいでしょう。手に職があったり人脈があったりした者は副業、というより元々の本業に回帰したのでしょう。
知られていない所では菓子司に転業という例があり、どうやら砂糖相場の上がり下がりを見て底値買いをするため、情報の収集と分析が必要だったそうです。いわゆる情報を扱う能力を生かした転業だったようです。調査能力を生かす転業には、代弁人(今の弁護士)の調査員というものもありました。裁判に必要な情報を集めるのはもちろん、訴訟相手の弱味を探り出して脅し、白を黒と言いくるめて訴えに勝つといったダーティーなこともあったようです。このため代弁人は恨まれ、火付けや打ち壊しに遭う危険があり、忍者屋敷のようなカラクリ屋敷に住んでいたそうです。
これら情報戦の熟達者が存続したからこそ、日露戦争の明石大佐の工作ができ、陸軍中野学校がいちはやく設立できたのだそうです。
コメント
07月03日
18:57
1: RSC
雑賀は秀吉が攻める頃は既に紀州北部で内部分裂を起こしており、有名な雑賀孫市は秀吉側に帰順したそうです。
根来寺と粉河寺は抵抗して壊滅、信長の手を逃れていた高野山も秀吉に降伏しました。
07月03日
19:14
2: U96
>RSCさん
そうでしたか。いいかげんな事を書いてすみませんでした。
07月03日
19:20
3: 黄金バット
ウヲー!!仮面の忍者赤影は敗者だったのかw
まあきっと今は忍者ですって名乗っても信用してくれないですねw
07月03日
19:26
4: U96
>櫻 弾基地(さくらたまきち 実験中)さん
欧米に忍術の道場がたくさんあります。よって自称忍者のあやしい日本人がたくさんいます。
07月05日
02:36
5: あおねこ
優秀な忍びはそもそも
正体を知られることも無い
知られるのや名前が売れているのは
二流と読んだ記憶が
07月05日
03:46
6: U96
>あおねこさん
なるほど。現在名前が知られているのは二流なのですね。
ありがとうございました。