潜水艦という特殊な環境に対応すべく「海軍給与令」とは別に、「海軍兵食研究調査委員会」で調査・研究が進められてきた各種の実験結果をもととして、大正15年に「官房第二○七○号」により潜水艦専門の「潜水艦航海糧食」が制定されました。
潜水艦では停泊中の「陸上及碇泊艦船糧食(乙食)」においても狭隘な艦内生活を少しでも緩和する目的から嗜好糧食に対する「食卓料」の支払いが艦艇部隊の支給額である5銭に対して倍額である11銭が支給されました。
主食面では通常の艦艇では「米麦飯」が主流ですが、食事の作り置きが多い潜水艦では、主食は「生パン」「米飯」が主流で、出港前に搭載した「生パン」の防湿・防黴には注意が払われました。また潜航がつづくと艦内の温度上昇と空気汚濁防止のために加熱調理ができないので、「缶詰」等を中心とした非熱処理による兵食が提供されました。
このほか、「米飯」と「缶詰」中心の食事のため、脚気を始めとした病気予防とビタミン摂取を目的として「米飯」炊飯の折は、「ビタミンB1」「ビタミンC」といった各種ビタミンを乳糖液で薄めたものを味噌汁に入れるほか、米は防湿のために「硬質米」を採用するとともに「米」も通常艦艇のように一枚の麻袋に入れずに、ハトロン紙の内袋に入れた米をさらに麻袋で包み二重梱包されまsた。
また、「生パン」「乾パン」の食事の折に出る「砂糖」と並んで「練乳」が出されました。「練乳」は缶入りで、当時は「缶詰牛乳」の名称で呼称されたもので、明治中期までは輸入品が多用されていましたが明治44年に横須賀鎮守府で国産メーカー「金鵄」の練乳が採用されたのをはじめ、各鎮守府でも国産の「練乳」が用いられるようになりました。
調味料は、狭隘な船内に多数の「醤油樽」と「味噌樽」を搭載できないことから、水で希釈して使用する液状の「醤油エキス」と、水に溶いて用いるインスタントの「固形醤油」と水に溶いて用いる「乾燥味噌」が採用されたほか、高温多湿の艦内での食欲増進のための「酢の物」製作用に「酢」が増加されており、後には水で希釈して使用する「酢の素」も採用されました。
コメント
07月15日
23:19
1: あおねこ
特殊な仕事には特殊な料理が
07月16日
05:18
2: U96
>あおねこさん
はい。ドイツの潜水艦ではいつもレモンをかじっていたようです。