黒色火薬の標準組成は、硝石:七五、硫黄:一○、木炭:一五です。
しかし日本は天然の硝石を産出しませんでした。よって、一五四三年の種子島での鉄砲伝来からほとんどをポルトガル商船による輸入に頼っていました。
ほとんどということは一部国産もしていたわけで、それは硝石培養法といって、動物性タンパク質中の窒素や尿中のアンモニアが、酸化バクテリアの作用により亜硝酸に変わり、酸化されて硝酸となり、土中のカルシウムと結合して硝酸カルシウムになり、これに炭酸ガリが作用して硝石になるのです。
ヨーロッパでは、牛馬の糞や魚のはらわた等とを石灰に混ぜてねかし、一~二年で硝石含有土を作っていたようです。
では、日本ではどうだったかについては月刊『Gun』七三年一月号に「合掌の里に残る硝石製造」という記事があります。
これは合掌造りで知られる富山県五箇山が、かつて加賀藩の隠れた硝石製造地であったことを、現地からレポートしたものです。
この記事によると、当地の製造法では、あくの強い草、たとえば最高なのはニガクサで、他にもシヤキ、サヤク、ヨモギ、を主原料とし、これに大量の人尿や蚕の糞も必要です。
まず、春先から夏にかけてこれらの草を刈り、雨露のかからない場所に積んでから、人尿をかけて一○日ほどおいいて蒸し腐らせる。一方、家の床下を掘って作硝ムロを作っておき、人尿や蚕糞をまぶした草と掘り出した土を交互にこのムロに積み重ねる、堆肥のように積んでおくこと数年、化学変化によって硝酸石灰を含んだ土が採取されます。
こうして作った塩硝土に水を加えて濾過して煮詰め、硝石を作っていました。
江戸中期、五箇山では毎年五t程度の硝石を出荷していたそうです。一度硝石培養をしてしまえば、その後は毎年採れるようになるのだそうです。
コメント
01月08日
21:42
1: META
漫画のドリフターズで
信長が敵兵の死体と便を裏山に生めて
硝石作っていたのが……。
01月08日
21:46
2: あると
昔、忍たま乱太郎で火薬の作り方を解説してたのを思い出しました。
ついでに、その時に登場していた肥溜めから糞尿と盗んでた、中年汲み取り団の事も思い出しました。
01月08日
22:00
3: U96
>METAさん
そんな描写があるのですか・・・私も読んでみます。
01月08日
22:10
4: U96
>あるとさん
原作者の尼子騒兵衛氏は行動力があり、リサーチを怠らない方と聞いております。
ついでながら、し尿が肥料に使えることが分かったのは鎌倉時代からだそうです。それまでは一度飢饉が起こると二、三年先まで引きずる状況だったそうです。
01月09日
00:34
5: 退会済ユーザー
俺も内容を見てドリフターズを思い出しました。
兵隊の死体や糞尿を土中に埋めて硝石を作っているシーンを・・・
01月09日
10:45
6: REW
学習漫画の“~のひみつ”シリーズで、厠の近くで取れるとか書いてあって、婉曲表現だなと(笑)
あと昔の英国(エリザベス一世の頃)かな。
海戦用に牛糞や馬糞を確保して云々みたいな話があって、大変だな~とか思ってました。
01月09日
11:17
7: U96
>edelwolfさん
・・・ドリフターズ、一度手に取ってみてみなければ、と思いました。
01月09日
11:21
8: U96
>REWさん
わたしも学研の科学と学習で内山安二氏の漫画で厠の近くの土から同じものが採れると読みました。
01月10日
00:36
9: ヤスト
ドリフターズのウンコネタというと
落とし穴にヤリを仕掛けておいて
そのヤリにご丁寧に便を塗っておくというのが
ありました。
やられた兵曰く傷口から破傷風になると
言っていました。
洗い流そうにも近隣の井戸にも便が放り込まれていて
使い物にならない。
ドリフターズをはじめ、平野氏の作品は
ハズレなしだと思います。
01月10日
04:52
10: U96
>ヤストさん
それはベトナム戦争のときにもしかけられた罠です。
それから、敵地の井戸は使うな!大便が入れられている可能性があるので川の水を飲め!川から死体が流れてきたら、草を噛んで汁を飲め!という記述が「雑兵物語」に書かれています。
01月12日
10:20
11: 鉄砲蔵
南北戦争の頃は洞窟に隠れ、長年降り積もったコウモリの糞を煮詰め、水でこして汁にゆで卵が浮くまで濃度を上げそれを蒸留して硝石を得ていたとか。とにかく凄まじい臭さだったそうです。匂いで敵に見つからなかったんだろうか?
01月12日
13:55
12: U96
>鉄砲蔵さん
アメリカ南北戦争の南軍でしょうか?火薬は中国で発明されたので、イスラム圏では硝石のことを「中国の雪」と呼んでいたそうです。・・・どこの国も硝石の入手には苦労していたのですね。