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U96さんの日記

(Web全体に公開)

タグ : クリミア戦争

2018年
10月28日
19:17

クリミア戦争史(その54)

 オスマン帝国内のキリスト教徒保護の問題(第四項目)については、すでに1月初旬に連合国の代表団がイスタンブールを訪れて、オスマン帝国大宰相のアリ・パシャおよびタンジマート改革派の指導者ファト・パシャ(この二人はパリ会議のトルコ代表でもあった)と会談し、オスマン帝国政府が帝国領内の非イスラム教徒(ユダヤ人を含む)に宗教上および公民権上の完全な権利を与える意向であることを表明するよう説得しました。トルコ側は外国勢力が国内改革を押し付けることに憤慨し、オスマン帝国の主権が侵害されていると感じていました。2月18日、スルタンは連合国代表団が提出した21項目の法律上の完全に平等な権利を約束し、財産権を保証し、非イスラム教徒が能力に応じてオスマン帝国の軍人または公務員になる権利を認める内容でした。改革勅令を発令すれば、西欧諸国によるこれ以上の内政干渉を阻止できるものと期待していたトルコ側は、オスマン帝国の主権の問題であるとして、改革勅令の問題をパリ会議の議題から除外しようとしました。しかし、ロシアは改革勅令を議題とすることに固執しました。和平条件の第四項目はオスマン帝国領内のキリスト教徒の保護を欧州五大列強の共同責任としているが、五大列強の中にはロシアが含まれているというのがロシア側の主張の根拠でした。妥協策として、オスマン帝国政府自身をも当事国に含めて、オスマン帝国領内のキリスト教徒の権利を重視する国際宣言が採択されました。ロシアは国内向けのプロパガンダで、この国際宣言をクリミア戦争におけるロシアの「精神的勝利」の証として宣伝材料に利用しました。ある意味では、ロシアのこの言い分にも、もっともな面がありました。なぜなら、パリ会議はベツレヘムの降誕教会とエルサレム聖墳墓教会の地位の現状回復を決定したからです。つまり、ローマ・カトリック教会の主張を退けて、ロシアが擁護するギリシャ正教会による両教会の支配を認めたことになり、この点についてもアレクサンドル二世はロシアの「精神的勝利」として繰り返し言及することになる。アレクサンドル二世は、和平協定が調印された当日に声明を発表し、「戦争を始めた本来の主要目標」が達成されたことを神に感謝しつつ、次のように国民に呼びかけました。「ロシア国民よ!我々が払った努力と犠牲は決して無駄ではなかった!」
(つづく)

コメント

2018年
10月28日
19:52

軍事上の事を宗教に替えるとはパないのぅ~

昔は皇帝以外は全員奴隷だったのに、軍人と公務員も非イスラムに開放するとは進歩したものですね。

2018年
10月28日
20:20

2: U96

>ディジー@「本好きの下剋上」応援中さん
そういえば、トルコではイエニチェリというのですが、異教徒の子供をさらってきて、皇帝の親衛隊に育てるのでしたね。彼らが権力を持ち出して、トルコは衰退しました。