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U96さんの日記

(Web全体に公開)

タグ : クリミア戦争

2018年
08月01日
20:17

クリミア戦争史(その30)

 フランス軍はズアーヴ部隊を先頭にして、マメロン稜堡に向かって突進しました。マメロン稜堡のロシア軍は猛烈な砲撃で迎え撃ちました。攻撃側はまともに砲撃を受けてパニック状態に陥り、四散し始めたが、指揮官たちが再結集を促して態勢を立て直しました。嵐のように襲いかかるマスケット銃の弾幕をくぐり抜けて、フランス軍はついにマメロン稜堡の防壁の下にたどり着き、攀じ登ろうとしました。ロシア軍は弾が尽きると、石を投げおろしました。ズアーヴ連隊の士官オクターヴ・キュレによれば、「壁の高さは約4メートルあり、素手で攀じ登るのは困難だった。我々には梯子がなかった。しかし、ここで引き下がってはいられなかった。人の肩の上に人が乗り、上のものが下のものを引き上げつつ、我々は壁を攀じ登り、胸壁を守っていた敵の抵抗を打ち破って突入した。突入すると、稜堡内のロシア軍に対して一斉射撃を浴びせた。その後に起こったのは大虐殺だった。我が軍の兵士たちは敵の大砲を破壊した」
 ズアーヴ兵たちは続けてマラホフ要塞に向かって突進しました。英国砲兵部隊のセント・ジョージ中佐は6月9日付の手紙に書いています。「砲兵隊の専門家としての私の感想を言えば、ロシア軍の砲撃技術はきわめて高度だった。砲弾は情け容赦なくズアーヴ兵の上に降り注いだ。ズアーヴ兵部隊は要塞のすぐ前の掘割まで到達したが、掘割を渡る手段がないままに躊躇しているところを砲撃でなぎ倒された。生き残った連中は、マメロン稜堡まで引き下がったが、そこでもロシア軍の砲撃を受け、結局、自軍の塹壕まで退却した。増援部隊が駆けつけて、再びマメロン稜堡まで進出し、稜堡を確保した。戦場には、2000人ないし3000人の死傷者が放置された」
 同じ頃、英国軍は採石場のロシア軍陣地を攻撃していました。ロシア軍はこの陣地にわずかな兵力しか配置しちなかったのです。万一、採石場が攻撃されて奪われても、レダン要塞から援軍を送ればすぐに奪回できると思っていたからです。英国軍は採石場を一旦は占拠したが、ロシア軍がレダン要塞から次々に兵力を繰り出して反撃するので、維持することは困難でした。両軍は数時間にわたって激しい接近戦を展開しました。朝の5時頃、採石場から最終的にロシア軍を駆逐し終わった時には、辺り一面に死傷者の山が築かれていました。
 6月9日の昼頃、ロシア軍のマラホフ要塞に白旗が上がりました。フランス軍が占領するマメロン稜堡にも白旗が上がりました。戦場に残された死体を収容するための一時休戦の合図でした。フランス軍はマメロン稜堡と「白壁の土塁」を奪取するために膨大な犠牲を強いられ、戦場には7500人もの死傷者が残されたままでした。エルベ大尉はピエール・ド・ファィイ将軍に随行して無人地帯に出向き、ロシア軍のポルースキー将軍との休戦協議にあたりました。6時間後、数千体の死体の収容が完了すると、休戦は終わりを迎えました。要塞と稜堡に掲揚されていた白旗が下げられ、ポルースキー将軍の命令でマラホフ要塞から空砲が発せられました。戦闘再開の合図でした。
 マメロン稜堡と採石場陣地が英国軍の手に落ちたことは、マラホフ要塞とレダン要塞への攻撃準備が整ったことを意味していました。攻撃決行の日付は6月18日に設定されました。この日はワーテルローの戦い40周年にあたる日でした。つまり、この日に英仏両軍が連合軍としてロシア軍に勝利を収めることができれば、英仏両国間に横たわる古いわだかまりの傷を癒し、共同で祝福できる新たな歴史を開くことができるものと期待されたのです。
(つづく)

コメント

2018年
08月01日
20:53

1: RSC

この頃、ナポレオン三世は既に缶詰の開発に手を付けていたのでしょうか。まだレーションの歴史が浅かった頃だったと記憶しています。

2018年
08月01日
21:13

銃弾が尽きると投石とか中世に戻ってしまう。
それは今でも同じかな。

攻める場所が分っているのだからハシゴ位用意していてほしいですねw

激しい戦闘の間でも、ハーフタイム? ルールはあるのですね!

2018年
08月01日
21:31

3: U96

>RSCさん
缶詰はイギリスで1810年に発明され、1813年に軍制式となっております。しかし、蓋がハンダ付けだったので、1人、日産50~60個でした。そして、缶切りはクリミア戦争には間に合わず、それが発明されたのは1860年でした。

2018年
08月01日
21:38

4: U96

>ディジー@「本好きの下剋上」応援中さん
投石とはまるで楠正成の千早・赤坂城の戦いですね。

マラホフ要塞まで攻め込む命令が出ていなかったので、梯子が用意できなかったのですね。

ついでながら、ガンダムでもブライトさんが避難民を降ろすためにガルマに休戦を申し入れています。