日本海軍の先端技術と言われた電波、通信、磁気、音響などの電子関連技術は戦後、いち早く国産テープレコーダやトランジスタラジオ等となって日本のエレクトロニクス産業発達のきっかけになりました。さて、テレビジョンの発明の副産物であるレーダーの開発にも日本はいち早く取り組んでおりましたが、軍上層部の「夜戦に強い日本海軍にとって、闇夜に提灯を点すに等しい」の一言によってその兵器化は大幅に遅れてしまいました。対するアメリカは海上戦闘や航空戦闘等にレーダーを駆使し、日本軍を苦しめました。
レーダー射撃の戦史を追うにあたり、まず水上砲撃戦の大まかな手順を押さえておきます。なお以下の手順は用語等は正確さよりわかりやすさを重視しました。
①目標となる敵艦を発見する。
②敵艦までの相対的な方位、距離を計測する。
③②を繰り返し、彼我の相対的な運動を算出する。
④③の結果と他の諸元(環境条件、砲の状態等)により砲の方位角、仰角を算出する。
⑤射撃を実施し、その着弾状況を観測する。
⑥⑤の結果及び彼我の運動によって砲の方位角、仰角を修正する。
⑦あとは⑤⑥を繰り返す。
レーダーが威力を発揮するのは上記の中で①②⑤です。特に射撃精度の良否に直接影響を与えるのは②⑤です。レーダーが光学照準に対して有利なのは以下の点です。
a、天候等の影響を受け難い。
b、測距精度が良好である。特に目標までの距離が遠い場合、光学照準に対する有利性が大きくなる。
c、着弾観測時における遠近観測が光学照準よりも容易である。光学照準の場合、弾着に偏差があった場合、遠近の観測は困難だが、レーダーの場合、弾着の偏差状況に関係なく遠近観測が実施できる。
一方でレーダーが光学照準に比して劣っているのは、主に以下の点です。
d、機材の信頼性
e、方位角計測精度
史実におけるレーダー射撃の効果については、識者によって見解が分かれております。レーダー射撃を高く評価する識者は上記a~cの有利性を強調し、一方レーダー射撃の能力を疑問視する識者はa~cを低く評価する一方でd、eを過大に見積もる傾向にあります。このように評価が分かれる背景には、レーダー射撃という技術に対する理解度の相違の他、実戦におけるレーダー射撃の実態が広く知られていないという点も無視できません。
次回より実戦におけるレーダーの活躍を追っていきたいと思います(つづく)。
コメント
07月17日
04:58
1: うちだたかひろ
やっぱいつの時代も老害が日本を駄目にしているな
まずは敬語の廃止から始めないと。
07月17日
06:00
2: U96
>うちだたかひろさん
東郷元帥もロンドン条約反対の象徴に祭り上げられ、英雄が老害と化したのですよね。
07月17日
07:24
3: 退会済ユーザー
コーエーのゲーム「提督の決断」内で
レーダーが開発された途端、夜戦における
戦場での視界が激変したのを思い出しました~~
07月17日
16:55
4: U96
>倶利伽羅いちろうさん
1号電探、2号電探ですね。1基の電探は百隻の潜水艦に勝ると伊41の艦長、板倉光馬氏が言っていましたね。