潜水艦が艦船に攻撃をするとき、艦船より前方に占位し、斜めに魚雷を発射します。すると進んでいる艦艇の未来位置に命中する訳です。大戦中、日本海軍の潜水艦は雷撃距離800mを基準にしていました。よって長射程の酸素魚雷は宝の持ち腐れでした。現在は目標運動解析も進歩しております。
さて、目標運動解析の原理を説明しましょう。方位情報しか得られない距離不明の一次元情報だけでは、理論的には針路も速力も分かりません。
そこで、方位変化率という情報を使います。目標を連続して探知していると、方位変化率が得られます。1分間で何度方位が変化したか、を目安にします。その原理はこうです。
半径1マイル(1852m)の円周の長さは6.28マイル。1周は360度だから、1分間に1度の速さだと1周6時間6.28マイルを6時間だから約1ノットとなります。
距離1マイルで方位変化率毎分1度は1ノットという便利な公式があるので、方位変化率だけはちゃんと分かります。これを応用するのです。
r=1海里 円周=2πr=6.28海里
6時間で1周する速力=6.28/6=1.05ノット
※半径1海里の円周上を1ノットで移動すると方位変化率(dB)は毎分1度
実際の速力と、方位変化率とはベクトルの向きで違いが出ます(理想は方位角90度)。まずは横方向のベクトルだけで判断します。方位変化率(1分当たりの変化量)が1なら1ノットですが、距離が10マイルなら10ノット、100マイルなら100ノットです。
ではベクトルの向きにはいりましょう。ベクトルの向きは的の方位角で決まります。
理想の方位角は90度、的速は全部方位変化成分
方位角30度、的速のsin30=0.5が方位変化成分
目標はフネである以上、速くても20ノット台です。精度が上がるまでは、15ノット当たりの仮定をします。針路、速力、距離の三要素のうち、一つを仮定すれば残りはぐっと計算しやすくなります。
遠距離から近づく態勢だから、針路もこっちを向いているはずです。そこで方位角を5度程度に仮定します。そうすると距離が詰まってきます。
距離が詰まれば、針路や速力の計算もまた精度が上がり、相乗効果をもたらします。
一番近づいた点CPAを通過する瞬間に方位変化率は最高になり、通過したら減り始めます。その時点では、方位角は90度だから、CPA通過後は精度は格段に上がり、魚雷を当てるレベルになります。
そこで魚雷を撃てば、目標の後ろから魚雷が近づき、探知されにくいという利点もあります。