おたくMk2

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　潜水艦が水中を航行するのに必要な舵として、旧海軍を含め、各国の潜水艦はこれまで主に垂直（縦舵と呼ばれています）と水平（横舵と呼ばれています）に配置された十字型、タイプによっては艦橋セイルに潜舵という潜航深度の変換用の舵が採用されています。
　中には平成16年度計画潜水艦「そうりゅう」から採用されたX型の4枚舵を有する潜水艦もあります。海上自衛隊では新型艦の革新的技術の一つと考えられる艦尾のX型の4枚舵ですが、十字型の舵においては針路を変える垂直舵と、姿勢を制御する水平舵がセットになっているのですが、それぞれ45度傾けた配置のX型では4枚の舵すべてに回頭姿勢制御の両方の役割を担わせています。
　十字型の艦では垂直舵（軸は同軸で１本）または水平舵（やはり軸は同軸で一本）が破損または故障すれば艦の回頭や姿勢制御が不可能となるのに較べ、X型なら４枚の舵のそれぞれが両方の機能を併せ持っているため、一部に破損や故障があっても操縦が可能です。
　このような潜水艦ではコンピューターにより艦尾4枚とセイル（艦橋）部の2枚の舵（潜舵とよばれています）を同時に制御して操艦する仕組みを持ち、十字型舵よりも旋回半径を小さくできるとともに、舵を切った時の船体の揺れも抑える効果があるほか、従来艦では作戦中に海底に着底するような場合、垂直舵の下側を損傷する可能性もありますが、X型舵では船腹が最下点となるため、そのような損傷から守られます。
　旋回する時には舵を4枚とも回頭するように切り、頭を上げるときには舵を4枚とも上昇するように切ります。それぞれの舵角を加減すれば、対角線側の舵同士が同方向に動く十字舵と同じ効果が生まれるのです。
　X型舵の利点をもう少し数学的に見てみますと、舵の面積を同じにし場合、十字型舵では上下の縦舵2枚で舵を切りますが、X型舵では4枚全部を使うから理屈の上では2倍の力が発生するので、結局、総合的には十字型舵よりも操縦性をよくすることができます。また旋回時の艦尾付近の騒音については明確には公表されていませんが、4枚で舵を切ったほうが1枚当たりの負荷が少なくなって騒音が減るという見積もりもでき、十字型舵と同じ面積の舵を装着するとした場合、スクリューから遠い（前方へ）位置にすることができ、スクリューへ乱れの少ない水流を送り込むことができ、流体学的な利点もあります。
　さらに浮上航行中、十字型舵だと上側の縦舵が海面上に出て効きが悪いが、X型舵の場合、海中に没している面積が多いので、操縦性の低下が少ないです。さらに接岸・着底時の舵を岸壁や海底に当てないよう寸法を制限して設計する場合には、十字型舵よりX型舵の方が舵寸法を大きくできて、操縦性が向上することにも繋がります。
　さしたる欠点もなく多くの利点が見い出せるX型舵、水中を高速で航行することに力量的な制限がある世界の中・小型の在来型潜水艦にとっての性能向上策としての採用が徐々に増えていくのではないでしょうか。