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U96さんの日記

(Web全体に公開)

2012年
11月15日
05:49

零戦のエンジン換装

 零戦のエンジン換装は、三二型開発の頃から構想があったといわれます。しかしなかなか実現せず、昭和19年の五四丙型になってようやく換装が決まりました。
 搭載したのは「金星」六二型エンジンで離昇出力1500馬力、キャブレターでなくインジェクション(燃料噴射装置)を備える故障の少ないバランスのいいエンジンでした。排気量は32.34リットルで、外径は「栄」エンジン搭載型より68ミリ大きかったです。
 零戦を生き返らせるエンジンの換装でしたが、試作一号機の完成は昭和20年5月で、生産数は2機にとどまりました。
 五四丙型(制式後の名称は六四型)は、五二丙型のエンジン換装型として、昭和19年11月に計画されました。選ばれたエンジンは三菱製「金星」六二型で高度6000メートルで1250馬力を出す、空冷二重星型14気筒エンジンでした
 このエンジンは輸送機から陸軍の100式司令部偵察機まで多くの機種に搭載され、零戦の計画段階でも搭載エンジンの候補でした。
 「金星」六二型エンジンは中島製「栄」二一型エンジンと比べて約30パーセントの出力向上で、排気量も大きく、パワーに余裕がありました。
 最大速度は時速572キロと五二丙型より時速30キロ弱しか向上しませんでしたが、操縦感覚は非力さを感じませんでした。高度6000メートルまでの上昇時間は6分50秒で、これは「栄」エンジン搭載型の最速7分1秒をしのいでいました。
 「金星」六二型は非常に優秀なエンジンで、エンジン不調に悩んでいた日本機の多くが換装用に選んでいます。例えば、水冷エンジン「ハ40」搭載の陸軍の三式戦闘機「飛燕」が「金星」に換装して「五式戦」となり、海軍では「彗星」艦爆が水冷エンジンの「熱田」から「金星」に換装しました。
 「金星」は大型機用のエンジンといわれることが多いのですが、「栄」に比べて75キロ重い程度でした。
 「金星」への換装にともなって、エンジンカウリング(整形カバー)の形状が変わりました。キャブレターに代わってインジェクションになったので、空気取吸入口が大型化され、機首武装は撤去され、武装は主翼の20ミリと13.2ミリが各2丁づつ計4丁となりました。
 ちなみに航続距離は約2620キロです。

コメント

2012年
11月15日
22:47

……一応訂正です。
五式戦のモトになってるのは「ハ40」ではなく、川崎独自の性能向上型である「ハ140」搭載の三式戦「飛燕」二型です。
ただでさえ複雑なハ40(DB601)をさらにチューンした為に、余計に製造が難しくなり、製造が遅延して機体ばかりラインに並んでしまった為の措置でした。
「アツタ(DB601の愛知版)」の方は、信頼性……というか、整備兵の不慣れ(ちゃんとした整備マニュアルに基づいて教育がなされなかった)で稼働率が落ちた為ですね。

金星の性能を物語るエピソードとしては、ダグラスDC-3(C-47)を三菱がライセンス生産した零式輸送機に、本来のP&W R-1830「ツインワスプ」エンジンの製造ライセンスが得られなかった為、代替として採用された処、性能がDC-3より向上したという奴がありますね(^^)
……ちなみに、P&W R-1830と中島の「栄」は配管やキャブレター等の規格が共通していた為に、零戦を鹵獲した米軍に「栄はツインワスプのコピー(パクリ)」という誤った認識を当初与えました。

2012年
11月15日
23:13

2: U96

>咲村珠樹さん
訂正ありがとうございます・・・いいかげんなことを書いてすみませんでした。

2012年
11月16日
21:00

すいません、こちらも訂正です。
零式輸送機を製造したのは三菱じゃなくて昭和飛行機でした(^^;

飛燕二型(キ-61-II)はハ140エンジンの生産遅延で、機体だけ200機以上も先行して出来上がり、工場の建物だけでなく外の道路にまで「首なし」機体があふれかえったっていいますから、そりゃ「適当なエンジン付けてなんとかしろ」ってなりますよね(^^;
液冷エンジン用の細い機体に丸い空冷エンジンを取り付けるのは、陸軍航空審査部が持っていたフォッケウルフFw190が参考になったそうです。

2012年
11月16日
21:23

4: U96

>咲村珠樹さん
・・・私はてっきり明石のエンジン工場が空襲で破壊されたからと思っておりました。

2012年
11月16日
21:48

もちろん、エンジン工場の空襲被害は決定打でしたが、それ以前に製造の歩止まりが悪すぎたんですよ……。
ニッケルが使えなかったこと、そしてベアリングなどの精度が悪かったことで品質が大きく低下していたDB601をさらにチューンした(つまり、もっと部品の品質に対してシビアになる)訳ですから。
ドイツでも「お嬢さん」と呼ばれるほどデリケートなエンジンを製造段階で妥協しながら作り、それを……となると。
明石工場が無事でも結果は同じだったと思います。

2012年
11月16日
21:52

6: U96

>咲村珠樹さん
なるほど・・・ありがとうございました。