ではイタリアが北アフリカに派遣する部隊の装備を検討してみましょう。北アフリカの戦いで、特に1940年12月の「5日間襲撃」で少数のイギリス軍に大兵力のイタリア軍が殲滅されたのは、①イタリア軍が機械化されていないため、一旦戦線を突破されると、戦略的・戦術的に後退することが難しく包囲されること。このため後退できない部隊が丸ごと降伏し損害が増加すること。②反撃できる中戦車の戦闘力が低く、数が少数であるため反撃できないこと。このため、突破されたらされたままであり、補給路の奪回が困難であること。③歩兵分隊レベルでの歩兵携行火器が極めて脆弱であり歩兵分隊同士での戦闘に勝利できないこと。の3点が主たる原因です。このうち、②については、イタリアの基本的戦車生産技術力、工業力の問題があり容易には解決できません。ドイツ軍にこの機能を担ってもらうほかはありません。①についても、イタリアの自動車生産技術力・工業力の問題があるので、同様に解決は困難です。
そこで、イタリア軍の基本的装備改編計画としては、戦線を突破されるとしてもその過程で、敵に大損害を与えうる対戦車火器を配備することに重点がおかれることになります。そして、これならば実現可能です。
史実では、北アフリカ方面師団は通常編成の師団装備に加えて、①軽戦車大隊を1個。②対戦車支援大隊を1個増強されていました。しかし、これは戦史が証明しているとり、なんら解決策になっていません。そこで、北アフリカに派遣される師団は、戦車師団と機械化歩兵師団、自動車化歩兵師団に限定するというのが、もっとも有効な解決策になると思われます。これは、真理で、フォン・トーマ将軍は、北アフリカにドイツ軍を派遣する前からこの点を指摘しているのです。
そして派遣する機械化部隊に関しても、①歩兵の近接戦闘力を強化する。②イタリア製47mm対戦車砲を増強配備する。③イタリア製90mm対空砲を配備する。という装備改編を行う。機械化された部隊で構成することにより、戦術的後退を可能にし、また、対戦車火力を増大することで、敵に突破の際に多大の損害を出させることを可能にし、さらに歩兵の分隊レベルでの火力を強化することで、歩兵分隊レベルでの戦闘で圧倒されない装備を持たせる。これらの措置でも、有力な戦車がないため戦術的な反撃力を保持することは、相手が戦車部隊である場合にはほとんど不可能で、戦車が対戦車砲で撃破されている場合のみ、歩兵部隊に対して機械化された歩兵部隊による戦術的反撃が可能になる程度です。
派遣する機械化部隊数を4個師団に限定する場合で、以下の数量の装備が必要です。現実にこれだけの装備が可能かは、イタリアの兵器生産能力にかかているが十分可能と思われます。
1、ドイツ製装備による強化。①短機関銃:1個師団に500丁。1個歩兵分隊に1丁。合計2000丁。②軽機関銃:1個師団に250丁。1個分隊に1丁。合計1000丁。③小銃:1個師団に7000丁。合計28000丁。
2、イタリア製90mm高射砲の配備:1個師団に12門=各歩兵大隊に2門。
3、イタリア製47mm対戦車砲の配備:1個師団に48門=各歩兵大隊に8門。史実よりも24門多い。
4、イタリア製軽戦車1個大隊の配備:45両(史実どうり)。対歩兵戦術反撃用兵力および機動対戦車部隊の護衛。
5、イタリア製20mm両用砲の配備:48門(史実の8門より40門多い)。