やはりイタリア歩兵師団は使い物にならないのでしょうか?今まで見てきたように、イタリア歩兵師団の欠陥は、基本的歩兵装備の欠陥であり、これは、歩兵が日常的に大量に使用するため、関連する弾薬等の生産もからみ、その改善は、国家の総力を挙げてもできるかどうかという問題になります。
イタリアの工業界を再編・再構築するのは、平時においても大事業で戦時においては不可能であるとすると、①ドイツの優良な歩兵用装備をライセンス生産する。②ドイツの優良な歩兵用装備を輸入する=武器の援助を受ける。の2つの解決策しかないことになります。具体的には、①モーゼル小銃。②MP38・40短機関銃。③MG34・42軽機関銃。④39型手榴弾の輸入またはライセンス生産を行うのです。
ライセンス生産は史実においても実際に検討されていますが、知的所有権の問題が発生し、実現しておりません。そうすると史実でも実際に行われたように、武器援助の形で、イタリア軍にドイツ製兵器を供与するのが、現実的にもっとも実行しやすい政策であるということができるでしょう。しかし、これは、ただでさえ不足しているドイツ兵器をイタリアに渡すことになり、ドイツの軍需産業と野戦部隊の装備を圧迫することになります。
そこで、比較的生産数に余裕のあるモーゼル小銃(生産数=1500万丁)を大量に供与し、その他の生産数に余裕のないMP38・40短機関銃(生産数=105万丁)及びMG34・42軽機関銃(生産数=35万丁+42万丁)を一部限定的に供与することが考えられます。
不十分なようですが、これだけでも、イタリア歩兵師団の戦闘力は倍増することはほぼ確実です。威力があり、戦場で故障しないモーゼル小銃の供与だけでも、歩兵分隊の火力は大幅にアップすることは間違いないし、その他の装備については、供与できる武器の数量で編成できる範囲でエリート部隊を編成し、実際に野戦軍同士の戦闘が起きる北アフリカや東部戦線に配置し、バルカン半島や東部戦線後方地域での対パルチザン戦、イタリア本土の警備には、最低限の歩兵装備だけをドイツ装備に換装した歩兵部隊を配備する等の政策を採ることで、少なくとも野戦軍の装備は大幅に改善し、イタリア歩兵師団は、ドイツ歩兵師団に比較できるほどの強力な戦闘力を保持することが可能と思われます。
イタリア軍の弱さの根本にあるものに、一般の歩兵分隊には短機関銃が配備されていないことがあります。これは特にパルチザンとの戦闘においては、正規軍でありながら近接戦闘火力で、パルチザン・レジスタンス部隊、特にPPSH41短機関銃を標準装備したソ連パルチザン部隊に負けるという致命的な結果をもたらします。
そこで、これらの基本的装備のみ、ドイツ装備の供与を受けるとする場合、1個師団あたり次の数量の装備が必要になります。
①短機関銃:1個師団に500丁。1個歩兵分隊に1丁。②軽機関銃:1個師団に250丁。1個分隊に1丁。③小銃:1個師団に7000丁。次回は派遣戦域別に装備改善例を挙げていきます(つづく)。