海大Ⅴ型(伊65)では画期的な魚雷発射管を装備しました。
それは、無気泡発射管であり、潜水艦がとらなければならない隠密性を保持するにはもってこいの装備でした。
もともと魚雷は走行速度が駆逐艦の1.5倍程度なので、命中を期すには目標にかなり接近しなければならず、しかも潜水艦からの雷撃は発射時に圧縮空気の泡が大量に出て、敵にその位置を暴露しやすい欠点がありました。
発見されれば、必ず爆雷攻撃を受け、最悪撃沈もありうるので、位置の秘匿は死活問題です。
実用化された八八式無気泡発射管のしくみは、装填魚雷の後方、発射管後扉内にピストンを収納していて、発射の際に、その原動力である圧縮空気が管内に噴出してピストンを前方に押し出し、その背後の残留空気は排気弁により艦内に排出されます。
一方、ピストンは自動的に停止し、外部の水圧により後退して後管内に復帰する仕組みでした。
よって、発射動力の圧縮空気が気泡になって海面に浮上する事はなく、射点と発射時期が敵側に悟られず、敵の反撃を受けにくくなりました。
しかし、実際には発射時のピストンの動きによる衝撃が大きく、この衝撃により管体内の防震ゴムを破損して管体に変形を生じさせました。
管体に万一ひびや亀裂を生じれば、浸水や沈没の大事故につながりかねず、異常を感じた場合はすぐドック入りを徹底させて整備、点検、修理を怠らない対策がとられました。
後にピストンを使用しない断気弁方式の九五式が開発されると、八八式装備艦も断気弁方式に改造されました。
八八式には、後に酸素魚雷や電池魚雷も発射可能な対策がとられました。