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U96さんの日記

(Web全体に公開)

2013年
12月23日
19:23

アルファ級潜水艦

 西側でアルファ級と呼ばれた旧ソ連の原子力攻撃潜水艦は、在来艦を遥かに凌ぐ水中高速力を実現した野心的な設計の艦でした。しかし、新しい試みに伴うトラブルを克服できずに比較的短命に終わってしまいました。

 計画の発端となったのは、米空母機動部隊を発見したら水中高速潜水艦を即刻基地から発進させて迎撃するという、1957年に現われた水中高速迎撃艦構想でした。それには可能最大限の水中速力が要求され、水中を高速機動するので時として最大潜航深度を遥かに超えてしまう場合に備えて、強固で軽量な船体とする必要があり、推進プラントの小型軽量化を可能にする液体金属冷却原子炉、船体用チタン合金などの開発が進められました。

 1961年5月に705型高度自動化高速攻撃原潜実験艦計画が承認され、12月にその技術概案を国防省が認め、詳細設計に進みました。30隻の建造が企図され、プロトタイプ艦としてK-64が1968年6月に起工され、1971年12月に竣工し、潜水巡洋艦に類別されました。

 本級の要目は以下のとおりです。
 排水量水上2300トン、水中3100トン、全長81.4メートル、速力水上14ノット、水中42ノット、兵装53.3センチ魚雷発射管6門、魚雷18本または機雷36個、最大潜航深度420メートル、乗員32名。

 船型には水中抵抗を最小にする長さ/幅比8.1の1軸推進涙滴型を採用し、艦首部に小振りの潜舵を、艦尾部の推進器直前に設けた十字形の支持框に大きな横舵と上下の縦舵を設置しました。
 当初は船体構造を3つの水密区画に仕切り単殻式とした水上排水量1500トンの艦の構想が提案されましたが、ソ連海軍は複殻式構造を要求し、排水量は約5割増加しました。チタン合金の使用で小型軽量化し、耐圧船殻の内部は6つの水密区画で構成されました。

 発射管室にはソ連で初採用の水圧式発射管6門と次発魚雷急速自動装填装置を装備しました。雷撃は発令所に設けたサルガン魚雷発射指揮装置により行なわれました。

 原子炉は高出力で軽量コンパクトな液体金属冷却炉とし、出力155MWのOK-550型1基を原子炉室に搭載して、加圧水冷却式炉に比べて300トン以上の軽量化を実現しました。米海軍は同種炉の一次冷却系に液体ナトリウムを使いましたが、ソ連は液体鉛・ビスマス合金を使用し、OK-550型は3系統の一次冷却系とそれぞれに対応した蒸気発生器を備えていました。

 主機械室には38000馬力のOK-7K型ギヤード・タービン1基を設置して、水中速力42ノットの高速を得ました。1500kWのターボ発電機2基のほか、M-850型ディーゼル発電機1基もここに設置されていたと考えられております。なお、連続航海期間は50日でした。発電機室には136馬力のPG-118型電動機2基を置き、左右の横舵支持框に設けた5翼の可変ピッチ推進器を駆動して、原子力推進装置の故障時や低速航行に用いました。

 水測装置には艦首部に設置部に設置したアクティブ/パッシブ・ソナーを組み込んだオケアン複合ソナー・システムを、電測装置にはチビス対水上捜索レーダーやESM装置などを装備し、これから得られた情報はアッコルド統合戦闘情報指揮システムで処理されました。

 本級では大幅に自動化が進められ、ソジ水上・水中統合航法システム、モルニア総合通信システムなども備え、前記のアッコルド・システムにより発令所に設けたひとつのコンソールで、原子炉の操縦・制御から兵器の指揮管制まで、すべての機器を運用できました。広範な自動化の採用により、乗員数の大幅減少が可能になり、その結果、居住性の著しい向上ができました。

 1978年頃、一等大型原子力潜水艦の類別になり、量産が始まりました。これらは2群の一次冷却系と蒸気発生器を持つBM-40A型液体金属冷却式炉1基に変更し、705Kと称されました。通信システム、ソナー、指揮装置などが変更されたと伝えられていますが、詳細は不明です。

 本級の水中での高速力と運動性は抜群のものがあり、1分で静止状態から40ノットに達し、3分で6ノットから42ノットに増速しました。そして最大速力で180度の急反転を2回続けて旧針路に戻すのに42秒しかかからなかったと伝えられております。

 しかし基地に停泊中も凝固防止に液体金属を常に加熱せねばならず、設備と取り扱いが厄介でした。

 西側では本級は水中航走時の騒音が激しかったといわれています。しかしロシア側の資料では、チタン合金の船体は鋼製より吸音性が劣るので各所に空気サスペンションを採用し、液体金属冷却炉の搭載で一次冷却系循環ポンプの発生音を低めるなどして静粛性を高め、米ロサンゼルス級攻撃原潜と探知・追跡合戦を行なったこともあったと伝わっております。

 また西側では最大潜航深度が700メートルと見られていた時期もありましたが、本級の安全潜航深度は350メートルで、最大潜航深度は420メートルです。

 したがって、本級は西側対潜部隊や攻撃原潜の手の届かない深度から、高速で騒音を発しながら航走して作戦を遂行するという従来のイメージは修正されるべきでしょう。

 1996年6月、最後の艦が除籍され、以降、本級の建造概念を継ぐ潜水艦は造られておりません。

コメント

2013年
12月24日
00:52

アルファ級カッコイイですねw ソ連の潜水艦がデザイン的には結構気に入っています^^このテの足の速い艦やタイフーン級のように超デカイ艦とか挑戦的なデザインが多いですねw アルファ級の原子炉は配管腐食による冷却体漏れ事故が多発していたと記憶してます、って言うか、残念ながらソ連の原子炉の事故はアルファ級に限らず他国と比べても非常に多いと思います・・・

余談ですが、ボクは以前潜水艦のRC(ラジコン)を作れないかと思いいろいろネットで探していたんですが、バラストタンク内蔵のモデルになると調整がハンパなく難しいのと趣味の範囲を超える金額が掛かるので断念しました(T T) その時モデルアップしようと思っていたのがアルファ級ですww
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2013年
12月24日
18:06

2: U96

>もぐりん。さん
アルファ級はカッコイイですね。私も気に入っております。見た目がいいし、高性能なので、仮想戦記に出まくりですね・・・それにしても試作艦も原子炉のトラブルで1978年には修理不可能になっていたのですね。試作機みたいなものを大量に配備してしまうのはMig-23も同様ですね。まあ武器にはハッタリ的強さも必要と思います。

ラジコンでアルファ級ですか・・・それはできるなら見てみたいですね。Ⅶ型Uボートのラジコンの動画はYou tubeで見かけましたが・・・