大事にしていた本にカビが生えていたのを発見しました。ショックです。
書名は「快楽主義の哲学」です。著者は澁澤龍彦です。昨年の暮れに澁澤龍彦の書籍を売り払いました。正直、これを手放してしまったら、自分に何が残るのだろうと思いました。
以下は朽ちていく本のための忘備録です。(解説、浅羽通明)人生に目的などありはしない。すべてはここから始まる。曖味な幸福に期待をつないで自分を騙すべからず。求むべきは、今、この一瞬の確かな快楽のみ。流行を追わず、一匹狼も辞さず、精神の貴族たれ。人並みの凡庸でなく孤高の異端たれ。
(本文)人生の目的とは何か、と聞かれて、すぐに返事のできる人は、たぶん、宗教を信じている人だけでしょう。(中略)キリスト教によれば、ウシやブタが人間に殺され、ソーセージにされたりすき焼きにされるのも、神によって定められた彼ら動物たちの使命なのです。(中略)ありがたくなくても、ありがたく思わなければいけないのです。(中略)
でも、わたしたちとしては、人間のための人間の生き方を考えたい。(中略)人生に目的がなければ、覚悟をきめて、自分でつくり出せばよいのです、ケツをまくって、この人生に居直ってやればよい。(中略)つまり、わたしたちすべてが求めているのは、欲望の満ち足りた状態です。(中略)
たとえば、痛い目にあうよりも、あわないほうがよい、失恋するよりも、しないほうがよいというのは消極的な考え方です。いっぽう、狂熱的なツイストを踊りたいとか、血のしたたるようなビフテキを食いたいとか、もう日本はせせこましくていやだから、飛行機でパリへ飛んで行きたいとか、恋人と一晩豪華なホテルで過ごしたいとかいうのは、積極的な考え方です。(中略)
ここでは、問題をはっきりさせるために、意味を限定して、前者を幸福への欲求と呼び、後者を快楽への欲求と呼ぶことにしましょう。
快楽も苦痛も、人間の感覚に根ざした現象です。感覚に根ざしているからこそ、それだけ切実であり、万人に共通のものといえます。
ところで、幸福とはたんに苦痛の欠如です。これは、どうもあやふやな概念であるとしかいいようがありません。(中略)
要するに、幸福とは、まことにとりとめのない、ふわふわした主観的なものであって、その当事者の感受性や、人生観や、教養などによってどうにでも変わりうるものだ、ということです。
これに反して、快楽には確個とした客観的な基準があり、ぎゅっと手でつかめるような、新鮮な肌ざわり、重量感があります。おいしい料理をたらふく食いたいと思うのは、時代や環境を問わず、万人共通の望みであり、絶世の美女を手に入れたいと思うのは、歴史はじまって以来、すべての世の男性の、永遠の夢であります。そして、事実、うまいものを食えば、「ああ、うまかった!」と思わないわけにはいかないし、思いかなって美女の肌に触れれば、たちまちにして、口ではいえない快楽の極、陶酔境に運ばれます。
たとえ一瞬の陶酔であっても、その強烈さ、熱度、重量感、恍惚感は、なまぬるい幸福など束にしてもおよばないほどの、めざましい満足を与えます。(中略)
深沢(七郎)さんのすばらしい言葉を紹介しましょう。
「人間ってものは、生き物だからね。油虫みたいなもので(中略)あれは、平和じゃないですか。食べ物はあるし、どんなことを考えているのか知らないけれど。人間だって、将来は、考えるなんてことは、なくなってくるんじゃないですか。無感覚になるんじゃないの。動物的にね。」
わたしの考える快楽主義の極致が、この深沢さんの短い言葉のなかに、みごとに要約されています。無感覚というのは、ある意味では逆説的な表現で、快感が常態であるということの、裏返しになった表現だといってもよいでしょう。
・・・どうしてこんな事を書いたのでしょう。おそらくコルネさんの日記によるものが大だと思います。コルネさんは、自分には感性が足りないと訴えております。感性など無くても良いのです。何も自分を卑下する必要はありません。感性を高めると人生が豊かになるという反論があるかもしれません。ですが、そんなことを誰が実証できるでしょうか?そんなことより、別の楽しいことを発見しに行くべきだと思う次第です。
コメント
08月15日
22:01
1: ディジー@「本好きの下剋上」応援中
風通しの悪い場所の保管は やっぱり虫干しが必要ですかね!?
08月15日
22:08
2: U96
>ディジーさん
紙が日焼けしますので、カメラ店で防湿剤を買ってくるのが良いかと思います。
08月15日
22:14
3: しえら
快楽への追求が幸福となる
と考えると単純で面白いですね。
08月15日
22:29
4: U96
>しえらさん
♪君の人生は満たされているか~ちっぽけな幸せに妥協していないか~
08月16日
12:41
5: しえら
超人機メタルダーのOPって以外と深い歌詞だったんですね!
子供のころ凄い好きだったのにまったく覚えてない…
08月16日
17:32
6: U96
>しえらさん
実は、放映当初は「キカイダーもどき!」とてんで馬鹿にしていたことは内緒にしておいて下さい・・・
08月17日
01:08
7: ちはや
それは良い本をカビさせてしまいましたね。
08月17日
06:07
8: U96
>ちはやさん
はい。非常にもったいないと思います。