伊51潜水艦(海大Ⅰ型)の船体構造は、複殻構造で内殻は中央が眼鏡状で、鋼材の材質は海中型と同じMS(軟鋼)鋼で、板厚が12,5ミリ、内殻径が4292ミリでした。
また、艦の前後が単筒型に戻る特殊な形態を有し、外殻は単筒型の通常形態だった為、胴体中央がややずんぐりし、高速力発揮の際の増波抵抗を減らすため前後の部分を細く絞り込んだので、外板の加工が難しく工事が難航し、工員泣かせでした。
この特殊な形態は、ズルツァー社に依頼した高出力ディーゼルが工期に間に合わなく、やむなく海中型に採用されていた、ズ式二号ディーゼル出力1300馬力を4基搭載して必要馬力を確保し、4軸推進となった結果生じたものです。
ちなみに4軸推進の潜水艦は本級が世界で最初でした。
中央の眼鏡状内殻は機関4基を横1列で配置する必要から採用されましたが、機械室は強度の関係上縦壁を配した為二分され、連絡も悪く機械の運転が大変不都合でした。
本級は、主機(おもき:エンジンの事)を4基搭載したのでその分多く燃料を消費するので、2万海里の長大な航続力を維持するには燃料タンク区画が大変多く設定され、ただでさえ狭い潜水艦の内部を圧迫する結果となり、居住性は海中型より悪かったといわれました。
船体形状は、艦首が喫水線まで垂直で、線下がやや角度を持たせているもので、大きなシアを有していましたが、凌波性が悪く、後の海大Ⅱ型ではステムを鋭い角度を持たせ凌波性を向上させました。
前方のバウ・プレーン(潜舵)は船底近くに配置されていましたが、ドックに入らないとフジツボ等の付着生物のかき落としや塗装などのメンテナンスがしづらい事が判明したので、後の潜水艦では上方に配置されるようになりました。
主機は、海中型に搭載されていたズ式2サイクル単動空気噴射式ディーゼル・4基と水中走行用の500馬力閉鎖通風型電動機4基の組み合わせで、残念ながら、蓄電池の形式・個数は不明です。
このズ式ディーゼルは、第一次大戦中にスイスのズルツァー社から導入したもので、1号から3号まであったのですが、海大Ⅰ型に搭載されたのは2号でした。
いずれの型も実用経験が乏しかったため、主機として使用すると大小さまざまな故障を発生し、搭載艦の機関は通常の船舶用のものとはちがい、小型大出力が求められるので、構造が複雑で、デリケートな為、設計・製造には実用経験が多く必要とし、確かにズルツァー社はディーゼル機関を製造していたドイツのMAN社などと比べるとやや経験不足でした。
コメント
10月12日
21:20
1: タカハシ
好きな潜水艦です
10月12日
21:26
2: U96
>タカハシさん
それはありがとうございます!
次回は兵装と潜望鏡編です…